2011 年 24 巻 4 号 p. 384-389
排出量取引制度は現在,低炭素政策の重要な施策の一つとしてひろく導入がされている制度である。これまで排出量取引制度は現実の運用での評価,理論的な評価が多く行われてきた。そのなかでも経済実験により取引制度の評価も実際の制度設計に大きな影響を与える有用な分析結果を示してきた。しかしこれまでの経済実験による評価は市場参加者が売り手,もしくは買い手どちらかに規定されている場合の評価が多く,参加者が売り手にも買い手にもなりうる現実の市場での取引を十分に評価されていなかった。本研究ではこの点を考慮し,これまでの既存研究により最も優れているとされている取引手法であるダブルオークションの頑強性を評価するとともに,代替可能性の高いユニフォームプライスオークションとの比較を行う。分析の結果,ユニフォームプライスオークションがダブルオークションよりも優れた取引手法であることが示された。