2007 年 20 巻 3 号 p. 165-179
企業の環境マネジメント或いは環境パフォーマンスが経済パフォーマンスに与える影響に関する研究のほとんどは欧米でなされているのに対し,著者らは日本の製造業企業の公表データを用いて日本における企業の環境マネジメントの経済パフォーマンスへの影響を実証的に検証した。特に,われわれは積極的かつ予防向けの環境マネジメントは,企業の経済パフォーマンスのある側面よりむしろ,企業の総合的かつ長期的な経済能力に影響を与えていると主張しており,格付け投資情報センターによる長期債務格付けを企業の経済パフォーマンスの適切な代理変数とした。2000年から2002年までの1538データポイントを利用し,順序プロビットモデルで推定した結果,現在日本において,環境マネジメントに積極的に取り組んでいる企業が高い長期債務格付けを得られる傾向があることが明らかになった。この結果は多数の欧米における先行研究の結果と一致しており,日本においても環境マネジメントに積極的に取り組んでいる企業がそうでない企業よりも優れていることを示唆している。