大気環境学会誌
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原著
東アジア域における大気中222Rn濃度連続測定ネットワークと洋上の孤島における大気中222Rn濃度の後方流跡線解析
大倉 毅史山澤 弘実森泉 純平尾 茂一郭 秋菊遠嶋 康徳飯田 孝夫
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2009 年 44 巻 1 号 p. 42-51

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抄録

大気中222Rnを大気の広域輸送の諸現象を解明するためのトレーサーとするため,東アジア域において大気中222Rn濃度の連続測定ネットワークを構築した。陸域に位置する北京,名古屋においては,222Rn 濃度が高く,それぞれ月平均で10- 20Bq m-3,3- 10 Bq m-3,海域に位置する八丈島,波照間島においては,222Rn濃度が低く,ともに0.5- 3 Bq m-3程度であった。大気中222Rn濃度変動トレンドは観測地点により異なり,名古屋以外は,夏季に最も低く冬季に最も高い。短周期の変動トレンドは,北京,名古屋においては,1日周期の変動が見られ,八丈島,波照間島においては,1日周期の変動は観測されず,数日周期の変動が観測された。
八丈島における大気中222Rn濃度の数日周期変動は,総観規模の大気擾乱に依存していることが確認された。2001年4月には寒冷前線の通過直後に急激な222Rn濃度上昇が観測された。後方流跡線を用いて,八丈島における大気中222Rn濃度と大気の輸送経路の関係を解析したところ,中国大陸北部やシベリア大陸から輸送されてきた気塊からは,高濃度の222Rnが観測され,海洋から輸送されてきた気塊からは,低濃度の222Rnが観測された。冬季には,輸送経路の水平位置より,鉛直方向の経路に強く依存していると考えられる。八丈島における大気中222Rn濃度は大気の輸送経路に密接に関係していることから,八丈島で観測される222Rnは,主に中国大陸北部からシベリアや日本列島を起源とした222Rnの長距離輸送成分に強く依存することが明らかになった。

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© 2009 社団法人 大気環境学会
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