大気環境学会誌
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水稲の葉の老化および収量に及ぼす高濃度オゾンの影響
澤田 寛子河野 吉久
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2010 年 45 巻 6 号 p. 283-288

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抄録

高濃度オゾンによる止葉の老化促進が水稲の収量に及ぼす影響をオゾン感受性が異なる6品種の水稲を用いて調査した。オゾン処理はガラス室にオゾンを送風したオゾン添加区(日中12時間平均77 ppb)と外気オゾン濃度と同程度の外気区(同31 ppb)において定植から収穫までの間暴露することで行った。止葉の老化はオゾン添加区においてきらら397とKasalathで顕著に促進され、またコシヒカリにおいてもわずかに促進された。一穂当たりの収量はきらら397、コシヒカリ、Jothiにおいてオゾン添加区で減少したが、これは主に一穂当たりの総籾数の低下が原因であった。オゾン処理により止葉の老化が促進されていたきらら397では千粒重の低下が、Kasalathでは登熟歩合の低下がそれぞれ見られたが、それらの低下が収量の減少に及ぼした影響はわずかであった。以上の結果から、老化の促進によって生じる登熟期間の短縮が水稲の収量に及ぼす影響は小さいことが示唆された。また、オゾン処理による一穂当たりの収量の低下は穂数の増加によって補償されており、生育時期ごとのオゾン暴露量の差が収量に影響を与える可能性が考えられた。

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© 2010 社団法人 大気環境学会
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