大気環境学会誌
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総説
PM2.5の実態解明に向けて
― 最近の研究と今後の課題 ―
伏見 暁洋森野 悠高見 昭憲大原 利眞田邊 潔
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2011 年 46 巻 2 号 p. 84-100

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抄録

粒径2.5μm以下の粒子(PM2.5)に対する大気環境基準が、2009年9月に新たに設定された。PM2.5の濃度はSPMと同様に年々低下してきているが、都市部を中心にPM2.5の環境基準の達成は容易でなく、その実態を把握して効果的な対策を講じることが必要とされている。しかし、PM2.5は燃焼で発生する粒子や二次生成粒子が主体で、その組成や由来・動態が複雑である。多様な燃焼発生源から様々な炭素成分や灰分からなる粒子が発生する。窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、様々なガス状有機物などからの二次粒子の生成は、特に有機物に関して極めて複雑で、不明な点が多い。アジア大陸からの越境汚染の影響が年々増しており、実態をさらに複雑にしている。本稿では、国内外の都市におけるPM2.5実態解明のための既存の研究例を観測とモデルの二つの視点から整理するとともに、近年著者らが行った関東地方における広域、高時間分解、多項目観測と、それに基づくレセプター解析、それらとモデルシミュレーションの比較検討などの試みを紹介する。また、越境汚染に関して、これまでに得られている知見を概観しつつ西日本で行っている観測やモデルシミュレーションを紹介する。最後に、これらに関する今後の課題を整理することで、PM2.5の実態解明への道筋を考察する。

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© 2011 社団法人 大気環境学会
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