特殊教育学研究
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展望
自閉性スペクトラム障害者におけるナラティブ研究の動向と意義
李 熙馥田中 真理
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2011 年 49 巻 4 号 p. 377-386

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抄録

ナラティブは、ある出来事について組織化し、意味づけたものを他者に伝える活動である。本研究は、自閉性スペクトラム障害(以下、ASD)者におけるナラティブに関する研究の動向をさぐり、ナラティブに関する研究の意義を考えることを目的とした。ASD者は、ナラティブにおいて聞き手の理解を促すために必要な情報をまとめ、与えるなどの工夫を行わないことが報告されている。それは語用論の障害として指摘され、おもに「心の理論」獲得の困難さとの関連が論じられてきた。しかし、ASD者におけるナラティブは、語用論の障害をとらえるものだけではなく、ナラティブを通してASD者の社会性の特性や発達との関連について検討できること、ASD者の社会性を促すひとつの手段になる可能性が考えられる。今後は、ナラティブを通して社会性の特性や発達、支援に関する実証的な検討が必要であろう。

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© 2011 日本特殊教育学会
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