2012 年 50 巻 3 号 p. 279-287
本研究では、対人トラブルで攻撃的な行動を示しやすいアスペルガー症候群幼児を対象に、行動調整を促すことを目的とした音楽課題を実施し、音楽課題における自己評価による行動調整の発達過程を検討した。自己評価には「正の自己評価」「負の自己評価」「誤った自己評価」が観察された。自己評価は、2回連続した正の自己評価を増加させ、負の自己評価によって不適切な行動が修正されることが示唆された。自己評価の機会が増えることで正確な自己評価が行えるようになり、動機づけが高まり、行動調整が促進されたと考えられる。今後は、音楽療法士による無意識のノンバーバル・コミュニケーション行動が、対象児の自己評価にどのように関連するか、また、そのことによって行動調整の促進にどのように関わっているのかについて検討が必要であろう。