日本毒性学会学術年会
第43回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-208
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一般演題 ポスター
雌雄ラットを用いたアナターゼ型ナノ酸化チタン(ANN-TiO2)の2週間吸入毒性試験
*笠井 辰也平井 繁行大西 誠鈴木 正明梅田 ゆみ近藤 ひとみ福島 昭治
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抄録

【はじめに】アナターゼ型ナノ酸化チタン(ANN-TiO2)は、そのすぐれた光触媒機能、抗菌作用及び紫外線遮蔽能により、工業用触媒担体(太陽電池)、食品包装材、内装材(タイル、壁紙)等に既に使用されている。粒子は、大きさがナノサイズになることで物理的・化学的性質が変わり、毒性が強くなることが知られており、労働者への健康影響が懸念されている。今回、ANN-TiO2の実際のヒトへのばく露経路を考慮して、乾式で雌雄ラットに2週間吸入ばく露し、その毒性を検索した。【方法】全身ばく露型吸入チャンバー(容積1m3)に収容した雌雄F-344ラット(6週齢)に、平均一次粒径30 nmのANN-TiO2(テイカ (株))をエアロゾル化し、0、0. 2、1、5、及び25mg/m3の濃度で2週間ばく露した。ばく露中は、(1)光散乱式粒子測定装置を用いた濃度制御と濃度測定、(2)カスケードインパクターによる粒度分布の測定、(3)走査電子顕微鏡による形態観察、(4)症状観察、体重及び摂餌量測定を行い、2週間のばく露期間終了後に動物を解剖して、気管支肺胞洗浄液(BALF)検査、病理学的検査、肺中ANN-TiO2量の測定を行った。【結果】(1)濃度測定の結果、全ばく露群で変動係数は11.4%以下で設定値どおりの濃度でばく露が行えた。(2)空気動力学的質量中位径は0.8~0.9 μm、幾何標準偏差は全て2.1でばく露群間の粒度分布に差はみられなかった。(3)形態観察では、凝集した粒子が多数みられたが、ばく露群間に差はみられなかった。(4)動物に死亡はみられず、一般状態、体重、摂餌量、BALF検査、肉眼的観察及び臓器重量では、特記すべき変化はみられなかった。病理組織学的検査で、25 mg/m3群の鼻腔及び鼻咽頭に反応性変化と考えられる杯細胞過形成が認められた。肺中のANN-TiO2量は濃度相関的に増加し、肺1gあたりの量は、各群とも雌雄間でほぼ同程度であった。【まとめ】ANN-TiO225 mg/m3群で鼻腔及び鼻咽頭に反応性変化が認められた。(本試験は厚労省委託研究として行った)

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