芝草研究
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芝草を加害するガ類の研究II
ツトガの一種の生活史と発生経過
吉田 正義森鳰 節男伊藤 裕海
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1976 年 5 巻 1 号 p. 53-61

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抄録

成虫の燈火誘殺数や各化期における卵・幼虫・蛹・成虫を各条件のもとで飼育して, ツトガの一種の生活史や東海地方における経過日数等を調査するとともにこの虫の防除方針について考察した。
1成虫期に関する調査
(1) 翅の開張は雄で19mm雌で22mm内外, 体長は雄で8mm雌で9mm内外の灰白色のガである。 (2) 成虫の寿命は雄で3~5日雌で5~7日で, 産卵期間は2~3日である。 (3) 成虫の飛来は午後7時20分頃から始まり, 8時~8時30分に最高に達したのち急激に減少した。3化期における成虫の飛来はこれよりやや早くなった。 (4) 成虫の飛来のピーク時を過ぎると成虫は芝草の上に降りて交尾し産卵した。 (5) 1化期の成虫は5月中~6月下旬, 2化期は6月下~8月上旬, 3化期は8月上~9月中旬, 4化期は9月下~11月上旬に採集され, 年間4回の発生があるものと思われる。その発生量はそれぞれ503, 841, 13426および1872頭であった。 (6) 産卵数は157.5個で非常に多く, 年間4回の発生であるので, 短期間に急激に密度を増加することが考えられる。
II卵期に関する調査
(1) 卵の長径は0.525mm短径は0.328mmであった。
(2) 卵期間は30℃では5日, 25℃では7日, 20℃では10.3日であり, 8月上旬の室温では5日であった。ふ化は斉一であり, ふ化率も良好であった。
III幼虫期に関する調査
(1) ふ化当時の幼虫は暗褐色で短毛で覆われていて0.8~1.0mmであるが, 老熟して蛹化前には20mm内外に達する。 (2) 幼虫期間は室温で1化期では37日, 2化期では26日, 3化期では31日, 4化期では約230日であった。 (3) 幼虫による芝草の被害はその種類により顕著な相異がみられた。洋シバやコウライシバに比較して, ノシバの被害は軽微であった。
IV蛹期に関する調査
(1) 蛹期間は30℃Cでは7.2日, 25℃では9.2日であった。
V芝草の被害の最も大きいのは8月~9月における3化期の幼虫による被害で, 短期間にグリーンやフェアーウェイの芝草を黄変することがある。越冬幼虫が多い場合は, 7月~8月における2化期の幼虫による被害が起る場合があった。
VI芝草の被害が肉眼でわかるようになった時では防除を行っても被害を免れることはできない。この虫の防除を行う場合は, 1・2化期の早期における成虫の発生量に注意して, 発生量の少ないうちに防除を行わなければならない。

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