植生学会誌
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原著論文
栃木県南西部の耕作放棄地に成立する植物群落とイノシシSus scrofa Linnaeusの生息痕跡の関係
大橋 春香野場 啓齊藤 正恵角田 裕志桑原 考史閻 美芳加藤 恵里小池 伸介星野 義延戸田 浩人梶 光一
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2013 年 30 巻 1 号 p. 37-49

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抄録

1. 栃木県南西部に位置する佐野市氷室地区において,耕作放棄地に成立する植物群落の違いに着目して集落周辺の環境を区分し,イノシシの生息痕跡の分布との関係を明らかにすることを目的とした.
2. 調査地域における86地点の耕作放棄地において植生調査を実施し,クラスター解析によって種組成を類型化したうえで,各類型を反映させた環境区分図を作成した.さらに,調査地域において約1km^2の調査区を設置し,2010年11月,2011年2月,5月,8月にイノシシの生息痕跡調査を実施した.
3. クラスター解析の結果,調査地域の耕作放棄地に成立する植物群落は管理の状態や土壌の乾湿を反映し,メヒシバ-オヒシバ群落(C1a),アキノエノコログサ-ハルジオン群落(C1b),イヌビエ-コブナグサ群落(C2),ヨモギ-ヘビイチゴ群落(C3a),ススキ-セイタカアワダチソウ群落(C3b),アズマネザサ群落(C4)の6つの類型に区分された.
4. イノシシの採餌痕跡は,C3a,C3b,C4において年間を通じて最も多く確認された.また,秋から冬にかけてはC1aおよびC1b,庭,果樹園において春から夏にかけてはC2,竹林,河川においてそれぞれイノシシの採餌痕跡が多く確認された.イノシシの休息痕跡は8月にC3bとC4で多く確認された.
5. 耕作放棄地に成立する植物群落のなかでも,遷移の進行したC3bやC4における刈り取りなどの植生管理はイノシシによる被害を抑制するうえでもっとも重要であると考えられた.

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