植生学会誌
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短報
山梨県乙女高原のシカ柵内外の草丈の比較
高橋 和弘植原 彰高槻 成紀
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2013 年 30 巻 2 号 p. 127-131

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抄録

この20年ほどのあいだに日本各地でニホンジカが増加したが,山梨県の乙女高原では最近の10年ほどでシカが増えた.乙女高原は1950年頃にスキーゲレンデとして森林を伐採して作られた草原で,多様な草原性の植物が生育することから,人々に親しまれてきた.2000年にスキー場が閉鎖されたあとも,毎年11月に刈り取りをすることで草原が維持されてきたが,その頃からシカが増加し,大・中型双子葉草本が減少してススキが増加したと言われている.2010年5月に3基のシカ防除柵を設置し,翌年の2011年6月にそのうちの一つ(15m四方)の柵内外で9種の中・大型植物を選び,各20個体をマーキングして9月まで毎月高さを追跡測定した.2012年に4種を追加して6,8,10月に測定した.その結果,のべ13種中11種(イタドリ,カラマツソウ,クガイソウ,シシウド,ヤマハギ,オオヨモギ,ワレモコウ,アマドコロ,キンバイソウ,タムラソウ,ツリガネニンジン)は柵内で有意に高くなっていたが,ススキとヨツバヒヨドリは柵内外で違いがなかった.この違いは,ススキは再生力があること,ヨツバヒヨドリはシカが好まないことによると考えられた.

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