植生学会誌
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原著論文
山陰地方東部の砂質海岸における海浜植生の成帯構造と絶滅危惧植物の出現位置
黒田 有寿茂鐵 慎太朗
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2017 年 34 巻 1 号 p. 23-37

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抄録

山陰地方東部の砂質海岸において,海浜植物群落の種組成と種多様性,海浜植生の群落組成と群落多様性,汀線-内陸傾度における群落配列と絶滅危惧海浜植物の出現位置を明らかにするためにベルトトランセクト調査を行った.計7ヶ所の砂質海岸を調査地として選定し,得られた計287の植生調査資料を主としてTWINSPANとDCAにより解析した.解析の結果,調査地の海浜植生は汀線から内陸側に向かってコウボウムギ群落,ハマゴウ群落,ハイネズ群落と移行する群落配列をもつことが示された.海浜植物の種多様性はハマゴウ群落で最も高かったが,内陸側の群落で明瞭に高かった内陸植物のそれと比較して群落間における差は顕著でなかった.絶滅危惧海浜植物の出現位置は種により異なり,スナビキソウはコウボウムギ群落,ハマウツボ,イソスミレはハマゴウ群落,トウテイラン,ナミキソウはハイネズ群落に偏って出現した.また,群落多様性は砂浜・砂丘の奥行および砂丘の高さと正の相関をもち,規模の大きい砂丘をもつ砂質海岸ほど高い傾向にあった.一方,群落組成も主として砂丘の高さに応じて異なり,全ての群落を保持する砂質海岸は少なかった.これらの結果から,山陰地方東部においてその海浜植物フロラを保全していくためには,砂浜・砂丘の開発を避け,個々の砂質海岸における群落多様性を維持すると共に,異なる群落組成をもつ砂質海岸をエリア全体で保護していくことが重要と考えられた.

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