2015 年 36 巻 p. 139-149
鑑賞教育方法として視線経路の可能性を理論的及び実証的に検討し,以下のような結論を得た。1)自然状態の一般大学生は視線経路の実態から,基本的に作品に現実的意味を求め,作品の美的特質への関心は薄い。2)視線経路と言語記述を組み合わせた鑑賞教育方法は,各人の鑑賞内容を客観化する効果がある。さらに結節点数及び感情語記述を指示することで,より強化された方法となる。3)視線経路記述は,鑑賞文記述を容易にする。しかし,鑑賞行為と鑑賞文記述は全く別次元の作業であり,機械的に接続はできない。それゆえ,鑑賞教育内での鑑賞文指導は,鑑賞行為を阻害しない,文章として自立することを求めすぎないことが原則となる。4)作者も自作に視線経路を設定していると推定され,筆者提案の構図決定格子と連動させて,視線経路を特定する可能性と,構図決定格子が設定された図で視線経路を探す教材の可能性を示した。