2018 年 39 巻 p. 315-328
本論文は,1984年のナショナルカリキュラムの導入とともに始まったモルディブにおける美術教育について,その当時の教育現場の実態という観点から明らかにしようとするものである。 論考においては,草創期の美術教育の実態を物語る3つの資料を検討している。すなわち,モルディブ人教師を対象としたインタビュー,学校教員が作成した参考作品集,そしてモルディブの子どもたちが描いた絵画作品の3つである。これらを検討した結果,同国においては新しい存在であった美術教育が全国規模で急速に浸透していったこと,それには教育省作成の教師用指導書が大きな役割を果たしていたこと,そして,近代的な美術教育の概念が当初から受け入れられ実践されていたことが明らかとなった。