動物遺伝育種研究
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ヒラメ・カレイの身体に左右非対称性をもたらす発生機構
鈴木 徹
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2003 年 31 巻 Supplement1 号 p. 23-32

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抄録

魚類ゲノムの解読の結果、条鰭類 (ray fin fish) の仲間では、多くの遺伝子が倍化していることが明らかになった。Hoxクラスターの構造解析から、条鰭類と総鰭類 (lob fin fish) とが分岐した直後に、条鰭類では固有に全ゲノムの重複が起こっており、それが遺伝子の倍化に結びついていることが指摘されている。倍化した遺伝子には、異なった発育段階あるいは組織に発現するような変化が起こっている。このような遺伝子のbifunctionalizationにより、魚類の形態的多様性がもたらされている可能性がある。魚類のなかでも形態的に極めて特殊な例に、ヒラメ・カレイの仲間 (異体類) があり、両眼が片体側に配置するなど身体が著しい左右非対称性を呈する。最近、眼の配置が逆位になったヒラメ変異体の解析から、内臓の左右非対称性 (左右軸) の決定に関わる遺伝子が、異体類では身体の左右非対称性の決定にも利用されていることが示唆された。ここでは、魚類のゲノムおよび左右軸の特徴について紹介する。

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