本稿は,スリランカの製造業におけるチーム作業の実態について検討する。スリランカでは,チーム作業の効果について議論されているものの,チーム作業そのものがどの程度存在しているのかについては議論されていない。さらに,企業の管理者の多くが自社でチーム作業を実現していると明言しているが,上意下達と分業が徹底された伝統的な経営のあり方に基づくスリランカの企業内で,チーム作業の実態がどのようなものかは疑問である。そこで本研究では,一つのアパレル生産工場の人的資源管理のあり方を調査し,チーム作業の実態について検討することにした。その結果,調査対象になった工場はリーン生産方式の導入により作業組織を再編成し,チーム作業が促進されるように人的資源管理の方針が立てていることが分かった。加えて,チーム作業の基本原則「自律性・多能工化・相互援助」がスリランカの作業組織にも存在しているものの,自律性が限定されており,多能工化と相互援助を促進するために金銭的な動機付けが必要となっているということも把握できた。