本研究では,明暗条件下でニホンジカ(Cervus nippon nippon; 以下,シカ)2頭の有彩色(赤,緑および青色)同士の識別能力を明らかにした.試験はT字型迷路で行い,各有彩色同士を対比させ,シカが有彩色を選ぶと報酬(飼料)を与えた.実験室内の照度は,LED電球を点灯した試験1で色パネル中央部が200 lux,点灯しなかった試験2で0.1 luxであった.1セッションを20試行とし,80%以上の正答率(χ2検定,P < 0.01)が3セッション連続で得られた場合,提示した有彩色をシカが識別したと判定した.試験1:点灯下で,2頭のシカは有彩色(赤,緑および青色)をいずれも3セッション目または4セッション目までに識別した.試験2:非点灯下で,シカ2頭は赤色を8セッション目までに,緑および青色を4セッション目までに識別した.以上より,シカは明暗に関係なく,各有彩色同士を識別出来ることが示された.