日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌
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原著論文
繋ぎ飼いの成牛における運動場解放時の走る、跳ねる行動を用いた行動欲求の評価
中山 ふうこ二宮 茂
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キーワード: ウシ, 繋留, 行動欲求, 跳ねる, 走る
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2018 年 54 巻 4 号 p. 165-172

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抄録

繋ぎ飼いはウシの行動を制限することから動機づけられた行動が発現できないことによりウシのストレス状態を引き起こす要因となりうる。しかし、どの程度の繋留の連続がストレス状態を引き起こすかは明らかでない。そこで、本研究では繋ぎ飼いのウシを運動場に解放した際にみられる、跳ねる、走る行動に着目し、これらの行動から、繋ぎ飼いのウシの行動欲求の蓄積開始時期について明らかにすることを目的とした。実験は、岐阜大学応用生物科学部附属美濃加茂農場で飼育される黒毛和種繁殖雌牛16頭を4群に分け、群ごとに試験した。まず、繋ぎ飼いにおいて、毎日5 h (9:30~14:30) のみ運動場へ解放される状態にウシを馴らした(TR)。その後、運動場への解放を1日間、6日間中止する処理(PR1,PR6)を行った。各処理の終了後にウシを運動場に解放し、運動場解放後1時間までの行動をビデオカメラで撮影し、走る、跳ねる行動の発現頻度を記録した。また、繋留時のウシの行動をCCDカメラで撮影し、解放時と繋留時に発現した行動のレパートリーを比較した。跳ねる及び走る行動の平均発現回数(回/時/頭)は、TRで2.1 ± 1.1回、PR1で5.1 ± 1.7回、PR6で11.4 ± 3.9 回となり、PR6はTRより有意に多かった(P < 0.05, Dunnett’s test)また、解放時にみられた跳ねる行動、走る行動、模擬性行動は繋留時には観察されず、繋留により完全に制限された。以上のことから、6日間の繋留の連続はウシの行動欲求の蓄積を引き起こす可能性が示唆された。

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© 2019 日本家畜管理学会
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