抄録
カズキダニ属の一種であるOrnithodoros moubataを用いて,総神経球(Synganglion=SyG)に含まれる卵黄形成を誘導する因子について調べた。ピレスロイドの一つ,サイパーメスリンは神経分泌をうながすことが知られているが,サイパーメスリンを結紮によって分けたSyGを含む前部と,含まない後部(卵巣を含む)の両方に処理したところ,前部のみヴィテロジェニン(Vg)の誘導がみられた。これまでの研究と合せて,CyMはSyGから卵黄形成誘導因子の分泌を促進すると結論した。また種々組織の抽出液を未吸血雌成虫に注射し,Vg濃度と卵巣発達の誘導活性を調べたところ,未吸血雌のSyGに活性がみとめられた。このことから卵黄形成誘導因子(VIF)は未吸血時のSyGに含まれ,吸血により分泌され,吸血後しばらく(5日目まで)は含まれていないことが判明した。