2025 年 31 巻 2 号 p. 2_1-2_17
本論文の目的は、家事テクノロジーの利用において、効率性を追求することと家族をケアするという文化的対立は、どのように解消されるのかについて明らかにすることである。このような目的のもと、制度論における制度ロジックや物質性の研究を主要概念として採用し、ロボット掃除機の事例研究を行う。矛盾する制度ロジックに関するこれまでの研究は、矛盾を解消するための企業やメディアによる言説の創造に注目してきた。これに対し本研究は、消費者がロボットとどのように関わりながら関係性を構築するかを明らかにする。30名の既婚女性に対するインタビューデータのコーディング結果をもとに、関係性を「家事代行」「子供」「遊具」という3つのタイプに分類した。このような研究は、制度論と物質性に関する研究を統合し、消費文化におけるモノのエージェント的な役割を解明しようとする消費研究の流れと一致する。特に本研究は、モノと消費者との相互作用による関係構築をみていくことで、矛盾が解消され、ロボットが受け入れられるプロセスを明らかにする。