2008 年 26 巻 2 号 p. 87-91
口腔領域の悪性腫瘍に対して放射線治療を行うと“radiation caries”が生じる. しかしながら, 象牙質に対する放射線照射の影響については明らかではない. そこで本研究は, 放射線照射がコンポジットレジン修復物の辺縁封鎖性と窩壁適合性に及ぼす影響について評価検討した. ウシ下顎永久切歯の一方の群に, コバルト60照射装置を用いて60Gyのガンマ線を照射した後, 唇側面を研削し平坦面を作製した. 直径3mm, 深さ1.5mm (C-factor=3) の円柱状の窩洞を象牙質平坦面に形成した. Clearfil Mega BondとワンステップボンディングシステムであるTokuyamaBond Force, あるいはClearfil tri-S Bondの接着システムを使用して, ハイブリッドレジンであるClearfil AP-XのシェードA3を填塞した. 光照射器を用い, 出力600mW/cm2で40秒間光照射を行い重合硬化させた. 37℃暗所水中に24時間保管後の試料と, その後, 5,000回のサーマルストレスを与えた試料の窩縁と半切面の窩壁に色素浸透試験を行った. これらの結果について, Kruskal-Wallis testとMann-Whitney U testで統計処理を行った. 60Gyのガンマ線照射は, サーマルストレス前後のどちらにおいても, コンポジットレジン修復物の窩壁適合性に影響を及ぼさなかった. しかしながら, ワンステップボンディングシステムは, ツーステップボンディングシステムのClearfilMega Bondと比較して, 健全象牙質に対しては有意に低い窩壁適合性を示した.