2020 年 25 巻 1 号 p. 1_18-1_23
本作品は、他者が対象物に向けている注意の所在を理解する共同注意という行動を元に、描かれた顔の視線の方向を鑑賞者に読み取らせることで、空間内での注意・身体の誘導を促す体験型作品である。展示空間内には、モニター、A2パネル、A3パネルと壁紙に、描かれた顔が配置されており、鑑賞者は顔の視線の先をその都度辿りながら、空間内で注意を周遊させていく体験を行う。本稿では、そのデザインプロセスとして、顔の造形、黒目の位置関係、視線の特性、空間設計について、どのような着眼と条件によって設計を行ったかについて述べる。本作品は、2019年3月に松屋銀座7階デザインギャラリー1953にて展示され、人間の内部状態を変化させる新しい体験型作品のモデルの可能性を示すものとなった。