2021 年 27 巻 1 号 p. 1_116-1_121
竹久夢二の直筆原稿の分析により、筆跡の特徴を明らかにし、これを基にした平仮名書体の開発を試みた。
まず、翻刻が存在し照合可能な資料として「ベルリン日記」(1932(昭和7)年~1933(昭和8)年頃、縦書き、鉛筆)を選択し、平仮名を採字した(47音、計1,048字)。
次に、判読性が確保されながらも特徴的であること、正方形に対し収まりがよいことを条件に、各文字2〜4種に絞り込んだ後、骨格を抽出した。そして、抽出した骨格に対しエレメントの付加及び各部調整を行い、平仮名書体の原型を試作した。
その結果、筆圧や抑揚の情報が欠落するため、夢二の筆跡の魅力が的確に表現できているか疑問の残ることが判明した。そこで、文字のアウトラインを忠実に抽出し、書体に反映させる手法を実験した。さらに、組み合わせる漢字書体を設定し、フォントデータとして完成させた。