デザイン学研究作品集
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憩いの場に設置するパイプスピーカーによる音響装置のデザイン
藤盛 啓治阿部 眞理
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1997 年 3 巻 1 号 p. 2-5

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抄録

超高層のオフィスビルに囲まれた広場は、その周辺の景観を代表する重要な空間であるとともに、それらのビルに行き交う人々の憩いの場でもある。そのため、デベロッパーは都市計画の当初から綿密な計画を練り、設計・施工に反映させ、建設が終了した後も、その景観や機能の維持管理には充分な注意を払っている。本研究のパイプスピーカーによる音響装置の設置場所は、新宿副都心に建つオフィスビルの一角にある(図1)。建設当初(1979年)のこの広場は、「水と緑と焼き物をテーマとして計画されたこの立体的なプラザは、建物によって得られる地表の空間を人間のための広場として還元しようという意図の現れ[注1]」として高く評価され、設計を担当した日本設計事務所に対して建築学会賞が贈られている。現在この広場は、「新宿三井ビル55広場」と呼ばれ、新宿の名所の一つとして賑わっているが、その管理は三井不動産(株)が行っている(図2)。パイプスピーカー(以下、P.S.と表記)による音響装置をこの場所に設置する計画は、当初のプラザ構成のメインテーマであった「水と緑と焼き物」に加えて「広場のサウンドスケープ」を醸し出す要素を付加するものであることを提案者側(製品及びサウンドデザイナー、施工業者 : 詳しくは論文末尾に記す)が三井不動産(株)管理部との事前折衝において強調した。その結果、価値が認められ、導入への理解が得られた。しかし、「現状の広場の状態を維持し、大きな変化を加えないこと」を前提条件としたため、その構想は広場を管理する三井不動産(株)とそれを設計した日本設計事務所との双方の認可が必要になった。そのため、提案者側はP.S.による音響装置の具体的な取り付け位置やその形態、音響性能、施工手順、音楽ソ一ス(BGM)等について、それぞれ専門の立場から充分な説明を行った結果、具体化が実現した。

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© 1997 著作者
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