デザイン学研究作品集
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仮想店舗を持つ電子情報誌としてのウェブサイトデザイン : イタリアンデザイン・インフォサイト「ZOCCO」
生田目 美紀植村 徳
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2000 年 6 巻 1 号 p. 30-35

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抄録

本作品は「人とデザイン」というキーワードを具体化するために開設したホームページである。(以下、本稿ではホームページコンテンツをサイトと表現する)本作品は「ウェブによるデザインマガジン」であり、その目標は以下の2つである。(1)作者と作品を関連づける情報を提供することでデザインにおける文化活動を行う。(2)デザイナーの発掘・応援を行い、広く世界のデザイン界に貢献できるような活動につなげる。具体的にはイタリアの作家とその作品・作品情報紹介や日本で入手しづらいヨーロッパのデザイントレンドニュース発信などを行った。さらに「ショッピングのできるインフォメーションサイト」という切り口で、製品を入手できるというサービス提供を行った。そもそもインターネットが拡張し始めた当時、ネットワークを利用するコンテンツとして営利目的のものは認められていなかった。ネットワークの有用性が認められ、本作品の設計当時、インターネットは情報交換のメディアであるとともに本や部品などの規格化されたものの取引のメディアとしても使われていたが、デザインが重要な要素となる製品や芸術作品など、嗜好性の高いものの取引には利用されていなかった。しかし、インターネットのひろがりとともに、より深い情報とより広い情報を同時に提供することが可能となり、それらを受信者が選択的に利用できるという特性こそ、嗜好性の高いものの探索や入手に必要なことであると判断したため、デザインやアートに関する情報と実際のものを関連づけて提供するサイトを開設した。インターネットメディアを選んだ理由は、顧客ではなく個客へ対応するために最適のメディアだという点である。具体的には以下である。(1)作者とモノ・エピソードなど幅広い情報を関連づけて提示することができる。(2)ユーザーの文脈を優先した情報提供ができる。(3)希望者に対して実際のモノを提供できる。(4)ユーザーと一対一のコミュニケーションがとれる。(5)タイムラグの少ないフレッシュな情報発信ができる。(6)海外にも同時に情報提供できる。(7)サーバーログの解析でユーザーの嗜好を把握し内容調整ができる。コンテンツの企画と構造設計、内容のヴィジュアル化、インタラクション設計、技術条件設計など、ウェブデザインでは複数の領域を総合的に計画することが不可欠であり、その全てがデザイン活動に直結している。しかし、いまもって既存サイトの多くが視認性やインタフェースなどに問題を抱えているのも事実である。本作品では単に情報を表示するにとどまらずデザインで解決しうる諸問題について検討を加え、コンテンツ構造、インタフェースデザイン、ヴィジュアルアイデンティティ統一、によって使いやすいサイト設計を目指すとともに、ユニバーサルデザインの観点から様々な使い方に対応できるような配慮も行った。さらに本稿では、コンテンツの追加更新変更に関わるサイト管理の問題も、デザイナーが把握している必要があるという観点から取上げた。

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© 2000 著作者
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