背骨の軟骨が痩せた結果、椅子に坐っても上体をまっすぐ保てず、体が左右いずれかに傾く一人の高齢者のために、その息子と孫が、自宅で食事するための椅子をデザインしようとしたことからこの開発が始まった。何回もの試作の結果、取付け位置や厚みの調節が自在なエアークッションを木構造に取り付けることなどによって本人の要求に答えられる椅子ができ上がったが、残念ながら、彼はそれを使いこなす十分な時間もなく他界してしまった。その後、より多様な身体条件を持つ人々にも使える椅子をめざして、テーブル等関連家具もあわせデザイン開発を継続している。その結果、この椅子は、上体姿勢保持に関して、他の食堂椅子に比べて優れた効果を上げることが人間工学的実験によって明らかにされた。