アフリカ研究
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論文
タンザニア南部,マテンゴ高地における農村開発の展開と住民の対応
参加型開発プロジェクトの「副次効果」分析から
黒崎 龍悟
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2010 年 2010 巻 77 号 p. 31-44

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抄録

本論文では,タンザニア南部ムビンガ県で実施された参加型農村開発(SCSRDプロジェクト)の事例を対象としながら,住民主体の農村開発に向けて,農村開発プロジェクトを実施する側が意図していなかった成果(副次効果)を重視することの意義を示した。ムビンガ県では,1990年代中ごろ以降に実施されてきた農村開発の影響で,キクンディ(kikundi)と呼ばれる農民グループが農業技術やマイクロファインスの普及活動の母体として定着しつつあった。そのなかで同プロジェクトは,地域社会全体のキャパシティ・ビルディングを念頭に,まず環境保全と地域経済の活性化を具体的な目標として,それに関連する諸活動を推進した。プロジェクトの実施に呼応するように多くの住民が複数のキクンディを組織したものの,活動が進展するにつれて彼らの目的が融資の獲得であることが明らかになった。一方,プロジェクト・スタッフは住民の提示した養魚活動とプロジェクトが推奨する諸活動を関連させながら住民の意向に柔軟に対応していった。本論文では,住民がスタッフとのそうしたやりとりを経て,キクンディを単に融資の受け皿から,自発的な活動の母体として位置づけていったプロセスを明らかにするとともに,キクンディ間のネットワーク形成をプロジェクトの副次効果のひとつとして提示した。副次効果の内容には,ときに住民主体の重大な変化が内包されていることがある。農村開発の効果の多面的理解のためにも,副次効果の発現するプロセスの分析を重視する必要性を指摘した。

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© 2010 日本アフリカ学会
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