アフリカ研究
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研究ノート
なぜタンザニアでは地方分権が実体化しないのか
藍澤 淑雄
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2014 年 2014 巻 85 号 p. 23-31

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抄録

本論では,タンザニアにおける地方分権の実体化を阻害している行政構造的・政治構造的要因について議論する。タンザニアでは,90 年後半より国策として地方自治体に中央政府の権限を委譲すべく地方分権改革が進められてきた。しかし地方自治体が果たすべき地域開発支援の役割の重要性は認識されながらも,中央政府の権限が十分に委譲されているとは言えない。地方自治体の予算配分や人事における権限が部分的にしか委譲されておらず,地方自治体がその裁量で住民自治を支援すべく機能しているとは言えない。
そこには地方分権にかかる関連法規の未整備・不調和があり,その状況が中央政府の権限移譲を遅らせている。加えて,一党優位体制により村まで及ぶ政治的な影響力は,必ずしも中央行政主導の地方分権化の取り組みと調和しているわけではない。地方自治体がこうした外部要因に変化をもたらすのは困難であり,地方自治体の自己裁量による地方自治を実現するための革新的な取り組みが期待される。

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© 2014 日本アフリカ学会
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