アフリカ研究
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特集:アフリカ漁民の世界を探る
タンザニア,ザンジバルにおけるダガー産業の構造
─生産地と消費地を結ぶ諸アクターの経済活動の分析をもとに─
藤本 麻里子
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2015 年 2015 巻 87 号 p. 37-49

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抄録

ダガーとはスワヒリ語で小魚の総称であり,タンザニアの各地で地域固有のダガーが漁獲され,干物として幅広く流通している。近年,タンザニアの周辺諸国でダガーの需要が急激に高まっており,それに伴ってザンジバル島ではインド洋産ダガーのコンゴ民主共和国への輸出産業が拡大している。本稿では,漁獲から出荷までの各段階においてダガー産業を担うアクターたちの経済活動を分析した。ダガーを買付けて加工し,商人に販売する仲買人には3つのタイプが存在した。ダガー漁師と,3タイプの仲買人たちとの間には,自然条件によって生じる様々なリスクを共有し合うことで築かれる一種の連帯が見られた。また,仲買人と商人との間では信用取引が行われ,継続的な取引を促進させる機能を果たしていた。急激な需要増大で突如沸き起こったダガー産業を支えていたのは,各アクター間の互酬的な取引関係だった。しかし,ダガー産業が成熟するにつれ,新たなアクターも出現してきた。直接取引の場合でも,商人に比べて半分程度の仲買人の利益は,中間商の台頭に脅かされ始めている。自己の利益の最大化を目指す中間商の出現は,ダガー産業を成り立たせてきたアクター間の関係に亀裂を入れかねない。

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© 2015 日本アフリカ学会
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