アフリカ研究
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特集:アフリカにおける「住民参加型観光」―「生活の場」からの再検討―
科学研究プロジェクトと地域社会を架橋するエコツーリズム
─ガボン,ムカラバ・ドゥドゥ国立公園における取り組み─
松浦 直毅安藤 智恵子新谷 雅徳竹ノ下 祐二
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2017 年 2017 巻 92 号 p. 109-121

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抄録

アフリカ熱帯林とそこに生息する大型類人猿などの野生動物の減少が大きな問題となるなかで,環境保全と地域開発を同時に達成するとされるエコツーリズムに大きな期待が集まっている。しかしながら,地域の社会的文脈の理解を欠いたエコツーリズム開発は,地域住民の周縁化を助長し,保全に悪影響を及ぼす危険性もはらんでいる。本稿では,住民主体の有効なエコツーリズムのあり方を検討するために,ガボンの国立公園で筆者らが取り組んでいる研究活動とエコツーリズムの基盤整備の事例をとりあげる。

筆者らが継続してきた大型類人猿の長期調査を基軸とした研究活動と,エコツーリズム開発のための基盤整備事業の過程を分析した結果,以下の2点が明かになった。(1)研究活動を通じて構築される地域住民との相互理解にもとづく協力関係が,エコツーリズム開発を受け入れるコミュニティの形成にむすびつく,(2)地域住民との協力関係にもとづき,さまざまな外部アクターが連携してエコツーリズム開発を進めることによって,住民の意識変化が促進される。エコツーリズム開発にあたって重要なことは,地域住民をふくむそれぞれのステークホルダーが協働し,地域の社会関係を再構築しながらコミュニティの基盤をつくることであるといえる。

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© 2017 日本アフリカ学会
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