アフリカ研究
Online ISSN : 1884-5533
Print ISSN : 0065-4140
ISSN-L : 0065-4140
特集:アフリカにおける「住民参加型観光」―「生活の場」からの再検討―
「伝統」を見せ物に「苦境」で稼ぐ
─「マサイ」民族文化観光の新たな展開─
中村 香子
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 2017 巻 92 号 p. 69-81

詳細
抄録

本稿は,アフリカにおける民族文化観光においてもっとも長期的に有力な「商品」でありつづけている「マサイ」をとりあげ,彼らが住民主体でおこなう観光業の実態を検証することを目的とする。前半部では,民族文化観光の現場で何がどのように観光資源化されており,それによってどの程度の収益がもたらされているのかを明らかにし,そのうえで,観光業の経済基盤としての脆弱性を指摘する。人びとが「最少努力・最少投資」の姿勢で観光業に対峙していることをふまえて,後半部では,人びとが新たに民族文化観光の資源として利用しようとしているものを分析する。そのひとつは女性の「苦境」であり,もうひとつは子供の「苦境」である。いずれも国際社会による開発支援の定番のイメージであり,観光客が無意識に求めているもうひとつのステレオタイプ─「かわいそうなアフリカ」に合致するものである。「伝統」と「未開」を「光」としてみせ,「苦境」を「影」として聞かせながら,人びとは,観光客から新たな支援を呼び込む場として民族文化観光村を活用しているのである。

著者関連情報
© 2017 日本アフリカ学会
前の記事 次の記事
feedback
Top