アフリカ研究
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特集:アフリカ的農業イノベーション(1)外来技術のアフリカ的導入
序論
─アフリカにおける農業イノベーションの諸特徴
鶴田 格小松 かおり
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2022 年 2022 巻 101 号 p. 1-8

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抄録

本特集の目的は,サハラ以南アフリカの小規模家族農業の特質を検討したうえで,そこで展開する草の根レベルのイノベーションについて,外来技術の導入という観点から検討することである。アフリカ農村のイノベーションの特徴としては,①個別多発性,②農業技術の「道具箱」としての性質,③技術発展経路の可逆性,などがあげられる。農民は基本的に外来の技術や新奇な作物に対して開放的であり,メリットがありなおかつ費用や労働の追加的な投入がなければ受け入れるが,古い技術や作物をも同時に残しておき,必要とあれば新旧どちらの選択肢もとれるようにしておく傾向がある。また新技術が既存の農法の小規模な変更にとどまり,体系的な変革をもたらさない,ということも重要である。このような農業イノベーションのあり方は,近代農法のパッケージをまるごと導入させるような緑の革命的な農業技術革新のあり方とは対照的であり,とくに環境的な持続性とレジリエンスという観点から再評価されるべきである。

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© 2022 日本アフリカ学会
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