アフリカ研究
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中部アフリカ・コンゴ北部における熱帯雨林の生態と土地利用
1. 二次遷移
中条 廣義
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1997 年 1997 巻 50 号 p. 53-80

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抄録

1. 中部アフリカ・コンゴ北部のジュベ地区で, 焼畑跡地での植生遷移を明らかにするために, 熱帯雨林とくに二次植生を中心に調査をおこなった。若齢二次高木林の優占種は Musanga cecropioides であった。
2. Musanga林の発達の初期段階に既に熱帯半落葉樹林種が多く出現することから, 二次植生から極相林への遷移が早く進行していること, さらにMusanga林は将来熱帯半落葉樹林へ移行することが明らかとなった。
3. Musanga林の階層構造は次のような特徴を示した: 高木層は3層に分化している。林冠の植被率は60-90%の範囲にあり, 低木層の植被率が90-100%ときわめて高い。
4. Musanga林の土壌は, 弱い塊状構造, A層とB層上部が砂壌土, B層下部が埴壌土~砂質埴土, にぶい褐色の粘土質のB層, 鉄結核および鉄瘤塊の欠如などによって特徴付けられる沖積土起源の比較的古い土壌であると考えた。
5. 地温測定の結果, 地上部の温度変化の影響を強く受ける深度は群落の植生高が高くなるにしたがい, 徐々に浅くなっていくことが明らかとなった。地温が一定となる深度にはばらつきがあるが, 一定地温は約24℃を示した。
6. A0層およびA層の層厚は, 二次植生下では遷移が進行するにつれて増加した。
7. Musanga林下の土壌に炭片層が集中的に出現することから, 焼畑農耕活動は Musanga林の発達する立地で永続的に行われていると考えた。
8. ジュベ地区の農耕民は, 焼畑の場として, 地下水位の変動の影響を受けない, 地下水位の高くない, および一時的にも冠水しない Musanga林の立地を選択的に利用していることを認めた。

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© 日本アフリカ学会
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