アフリカ研究
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人と土地を分かつ自然保護
エチオピア, センケレ・スウェニーズハーテビースト・サンクチュアリーと地域住民の関係
西崎 伸子
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2001 年 2001 巻 58 号 p. 59-73

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抄録

アフリカにおける自然保護は、西欧の自然保護思想に基づいて国家や国際自然保護団体などの自然保護を推進する側が主体となり、地域住民の意向を考慮せずに行われてきたため、両者の対立を招き、失敗を続けてきた。これまでの反省から、1980年代には、発展途上国の自然保護活動に地域住民が大きな役割を果たすことが期待され始めた。このような主体に関する認識の転換をうけて、地域固有の歴史、社会、文化、生態などを考慮することの重要性が指摘され始めた。しかし、自然保護区と地域住民の関係を具体例にもとづいて扱った研究は少ない。
本稿では、エチオピアのセンケレ・スウェニーズハーテビースト・サンクチュアリーを事例にして、地域住民とエチオピアの自然保護政策の歴史的な関係を解明した上で、地域住民が自然資源の利用のシステムをどのようにつくりあげてきたのかを明らかにした。
地域住民による自然資源のアクセスを制限したサンクチュアリーや国営農場の設立は、祖先の歴史が刻み込まれた土地を地域住民から切り離した。地域住民は、人と土地を分かつような自然保護に対して、様々な方法で抵抗をおこないつつ、外部の影響に対応しながら、長年にわたって独自の方法で自然資源を利用してきたことが明らかになった。
地域に固有の諸条件を考慮することを前提として、今エチオピアにおいて自然保護を推進する側に求められているのは、地域に密着して行う自然資源の利用に関する詳細な調査を行うこと、地域住民が独自につくりあげてきた自然資源の利用方法を自然保護活動にとりいれること、そしてこのような活動を支える、外部者としての謙虚な姿勢ではないだろうか。

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