アフリカ研究
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セネガルのイスラーム教団ライエン (Confrérie Layène)
親子として斬生した預言者ムハンマドとイエス・キリスト
盛 恵子
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2003 年 2003 巻 62 号 p. 3-30

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抄録

セネガル共和国の漁民レブーは、首都ダカールが位置するカプ・ベール半島を居住地とする。レブーはイスラーム以前に遡る精霊信仰を保っている。フランスの植民統治時代に、レブーの一漁師リマーム・ライが、ダカール近郊の町ヨフで、イスラーム教団ライエンを創設した。この教団の信仰内容の中心となるものは、転生思想である。教団創設者リマーム・ライは預言者ムハンマドの生まれ変わりであり、彼の息子イサ・ライはイエス・キリストの生まれ変わりである、と信じられている。本稿は、白人であった預言者ムハンマドとイエス・キリストとが、黒人であるレブーの親子として転生したという2つの転生は、カブ・ベール半島に居住するレブーの意識と呼応するものであるという解釈を提出する。カブ・ベール半島はかつてのフランス領西アフリカの中心地域であり、レブーはムスリムでありながら、西洋文明とキリスト教の影響にさらされていた。2つの転生は、白人の宗教であるイスラームとキリスト教を黒人化し、さらに、子は父に従うべきであるとするレブーの倫理感に訴えて、イスラームのキリスト教に対する優越性を主張する表象であると考えられる。

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