アフリカ研究
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地縁技術としての土器づくり
エチオピア西南部アリ地域における土器の野焼き
金子 守恵
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2005 年 2005 巻 67 号 p. 1-20

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抄録

本稿の目的は, エチオピア西南部アリ地域において女性職人らが行う土器の焼成技術の特質をあきらかにすることである。本稿では, 土器づくりの焼成技術を人々の生活と密接に結びついた地縁技術とよび, 技術的諸要素を検討するだけではなく土器をめぐる利用者と製作者の評価の仕方を手がかりにして, 関係論的な見方にたって土器づくりの焼成技術の特質をあきらかにする。現場での焼成温度の計測と野焼きの観察および粘土の特性実験の結果, 彼女らが粘土に土器片を粉砕した粉を大量に混ぜて野焼きの急激な温度変化に耐える土器を焼成していること, 焼成燃料の種類や量に注意を払い野焼きの火に積極的に介入して管理をおこない短時間で実用に耐え得る土器を効率的に焼成していることが明らかになった。また土器が壊れてしまうことを説明する表現や美しい土器を評価する表現について検討したところ, 職人や利用者はマルキ (具体的な場面や状況にふさわしい大きさの土器を表現する) とアーニ (職人独自の作り方を肯定的に評価する) とよばれる表現で土器の出来・不出来を説明すること, そしてこれらの表現は土器を介した人と人, 人とモノの諸関係を反映していることをみいだした。これらをふまえて私は, 地縁技術を, 土器をめぐる人と人, 人とモノなどの諸関係に依拠した評価や行為をもとにして成立している技術として再定義した。

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