アフリカ研究
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アフリカ・モラル・エコノミーに基づく内発的発展の可能性と課題
阪本 公美子
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2007 年 2007 巻 70 号 p. 133-141

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抄録

本論文は, 赤道アフリカにおけるモラル・エコノミーの志向する価値と組織の特徴に焦点を当て, その内発的発展のための課題と可能性について検討する。アフリカ・モラル・エコノミーの第一の特徴としては, 人間形成のための生命再生産が重視されている点である。第二の特徴としては, インフォーマルな組織が人びとの生活にとって不可欠であることが挙げられる。これらの特徴を内発的発展論と比較すると, 人間が生きるために必要な基本的必要の充足を志向し, 住民・市民といった組織や主体の役割への注目といった視点は, アフリカ・モラル・エコノミーと微妙なニュアンスの違いがあるものの, 呼応する側面も多い。しかし生命再生産が重視されているにもかかわらず, 必ずしも人びとの生命が保障されていない赤道アフリカにおいて, モラル・エコノミーに基づく内発的発展の課題は大きい。このような課題に対して, 倫理的観点から地球的なモラル・エコノミーの形成に対する期待も高まっている。そしてアフリカ・モラル・エコノミーを生かしながら内発的発展を実現することは, 生産を一義的に捉えてきたいわゆる先進社会に対し, オルターナティブを提示するという意味で地球的な意義があると考える。

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© 日本アフリカ学会
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