アフリカ研究
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政府開発援助における『人間の安全保障』の実践から見たアフリカの国家と開発
花谷 厚
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2007 年 2007 巻 71 号 p. 63-71

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抄録

本稿においては、2003年のODA大綱改定において日本の二国間開発援助政策に取り込まれた「人間の安全保障」概念のアフリカにおける実践、とりわけJICA事業を通じた実践経験に基づき、アフリカのコンテクストにおける「人間の安全保障」が要請する援助のアプローチとはいかなるものであるかについて考察する。アフリカにおいてなぜ人間の安全保障が大きく損なわれる様な状況が生まれているのか、そのような状況をもたらすアフリカの国家や社会の特性とはいかなるものかということについて、援助の現場で得られた経験を基に考察した上で、アフリカにおける「人間の安全保障」実現のために、援助(とりわけ二国間開発援助)に何が求められるかということについて検討する。アフリカの「人間の安全保障」の問題は、本質的にアフリカ国家の性質と国家一社会関係のあり方の課題に起因するものであると規定できる。したがってその対策としては、脆弱な状況にある人々に対し直接的にその生存確保や能力形成を支援したり、さらにまた国家の側から住民に対し社会サービスという形で保護を与えたりするだけでは十分ではない。アフリカ国家の機能不全の構造的背景を踏まえれば、アフリカ国家の基本的機能の是正を行うことが不可欠であり、それを通じて人々を国家やフォーマルな市場に対しより積極的にコミットさせ、国家一社会関係のあり方を変えていくことが必要である。

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© 日本アフリカ学会
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