アフリカ研究
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スワヒリ海岸キルワ島の海環境と船の文化
ダウ船とは何か?
中村 亮
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2007 年 2007 巻 71 号 p. 1-19

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抄録

スワヒリ海岸南部の河口域に立地する隆起サンゴと砂洲に由来する小島キルワ島は, 波風の穏やかなマングローブの内海と, 波風の荒いサンゴ礁をもつ外海とに囲まれている。人々の生活はこのような対照的な二つの海の利用のうえに成り立ち, キルワ島の船の文化もこうした海環境に対応して展開している。
キルワ島には5種類の船 (丸木舟, 平底船, ダウ船, マシュア船, 船外機付ボート) があるが, それらの船は内海専用の小舟 (丸木舟と平底船) と, 外海でも使用可能な竜骨構造船 (ダウ船, マシュア船, 船外機付ボート) に分けられる。小舟は内海での小規模な漁撈活動に使用され, 竜骨構造船は外海での漁撈活動や内海を航路とする渡し船や定期船として使用されている。
高価な竜骨構造船の所有は, 漁師以外の一部富裕層に限られている。キルワ島の漁師の大半は内海を中心に小舟や徒歩での採取漁などによって漁撈活動を行っているが, これがスワヒリ海岸の海村生活の元来の姿なのであり, 竜骨構造船は漁撈文化とは別の文化に由来するのではないかと推測可能である。
スワヒリ海岸の竜骨構造船の原型を良くとどめている船が「ダウ船 dau」である。大型木造帆船である英語の「ダウ dhow」の語源ともなったスワヒリ海岸の dau は小型木造帆船ではあるが, スワヒリ海村に暮らす人々にとっては, 内海を飛びだして外海を往くことのできる竜骨という画期的な構造をもった大きな船なのである。

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