アフリカ研究
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住民組織によるエンパワーメントの政治実践
エチオピアのグラゲ道路建設協会の経験
西 真如
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2008 年 2008 巻 72 号 p. 17-31

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抄録

エチオピアのグラゲ道路建設協会は、南部州グラゲ県の農村から首都アジスアベバに移住した人びとが、故郷の村に道路や学校を建設する目的で、1962年に設立した住民組織である。当時、エチオピア南部の農村は、貴族支配と結びついた収奪的な大土地所有制のもとに置かれていた。同協会の活動は、同国で都市から農村への再配分の仕組みを形成しようとした、最初の試みのひとつとして捉えることができる。
この事例の検討を通して、本稿では次のふたつの問題を検討する。ひとつは、住民組織と国家との関係である。とりわけ特定の集団が利益を得るために、他の集団の利益が構造的に排除されている1960年代のエチオピアのような体制に対して、対抗的な社会関係を構築してゆくための政治実践の方法について考察する。もうひとつの問題は、住民組織に参加する人びと相互の関係である。都市と農村という社会の異なる領域で生活する人びとのあいだに、民主的な社会関係を築くための交渉の手法を、グラゲ道路建設協会の経験を通して明らかにする。

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