アフリカレポート
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論考
アフリカにおける経済統合――制度的な制約要因――
箭内 彰子
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2017 年 55 巻 p. 92-104

詳細
要約

アフリカでは長年にわたり地域ごとに経済統合が推進されてきたが、各地域経済共同体における域内貿易は活性化せず、様々な非関税障壁も残されたままである。アフリカにおける経済統合の実質的な進展を阻んでいる要因として、経済統合を支えている制度面に着目すると、①法的拘束力のある国際協定に基づいて貿易自由化を進めているが、その実施段階において各国の裁量が広く認められている、②自由化義務の履行を確保するための紛争解決手段が充分に機能していない、③メンバーシップの重複により複数の関税率の存在といった制度的・手続き的な問題が生じている、などが指摘できる。

現在取り組まれている複数の地域経済共同体をカバーする広域自由貿易地域の形成は、こうした制度的困難に対する具体的な対応策を組み込んでいないため、貿易自由化が期待通りに進まない可能性が高い。アフリカにおける実質的な経済統合を進展させるためには、アフリカの経済統合の特徴から生じる制度的問題点を踏まえた上で、それらを解決する措置を講じる必要がある。

はじめに

2015年6月、アフリカにおける経済統合にとって重要となる二つの合意が形成された。一つは、アフリカの東部および南部に在する三つの自由貿易圏(東南部アフリカ市場共同体(Common Market for Eastern and Southern Africa: COMESA)、東アフリカ共同体(East African Community: EAC)、南部アフリカ開発共同体(Southern African Development Community: SADC))を統合し「カイロからケープまで」を含む広域自由貿易地域(Tripartite Free Trade Area among the COMESA, EAC and SADC: TFTA)をスタートさせる基本協定が採択されたことである。もう一つは、アフリカ大陸大の自由貿易地域(Continental Free Trade Area: CFTA)形成に向けた正式交渉の開始が宣言されたことである。これらの合意をてこに、アフリカの経済統合の加速化が期待されている。

アフリカが大陸内での経済統合を推進し始めたのは、世界的に自由貿易協定(free trade agreement: FTA)や経済連携協定(economic partnership agreement: EPA)が急増する1990年代以前のことである。1910年に結成された南部アフリカ関税同盟(Southern African Customs Union: SACU)は別格としても、多くのアフリカ諸国が独立を達成した1960年代には、アフリカにおける経済統合の必要性が認識され、アフリカ大陸の西部や東部など地域的にまとまりのあった経済グループごとに貿易自由化に向けた取り組みが開始されている[AfDB 2014, 9]。その結果、現在までに多くの地域経済共同体(regional economic community)が組織され、それぞれの中で関税同盟や自由貿易地域が形成されてきた。しかし50年以上という長い年月を掛けているにもかかわらず、アフリカにおける域内貿易は活性化せず1、様々な非関税障壁も残されたままである。アフリカにおける経済統合は実質的にはあまり進んでいないのが現状といえよう。

なぜ、アフリカにおける経済統合は進展しないのか。その要因として、例えば各国の経済構造が似ていて相互に輸出入できるような貿易構造になっていない、あるいは域内貿易の進展には地域大での工業化が重要となるが、各国の利害対立が激しいため地域で共有しうる産業政策の導入は難しく、域内でのバリューチェーンが構築しにくいなど、経済的な問題点はこれまで頻繁に指摘されてきた(Tanyanyiwa and Hakuna 2014, 112-13Muuka, Harrison and McCoy 1998など)。しかし、経済統合を支えている制度自体についてはあまり議論されてこなかった。本稿は、アフリカにおける経済統合過程が抱える制度的な問題点を明らかにし、克服すべき課題を検討することを目的とする。その際、アジア地域、とりわけ東南アジア諸国連合(Association of South East Asian Nations: ASEAN)における経済統合過程との比較考察を行うことにより、アフリカに特徴的な課題に焦点をあてる。まず第1節で、アフリカにおける経済統合がどのように進められてきたかを概観し、第2節ではアフリカの経済統合が実質的に進展していない要因を、各地域経済共同体の制度的側面に着目しながら検討する。さらに第3節では既存の地域経済共同体が抱える制度的困難に対してTFTAがどのような対応をしているのかについて考察する。

1. 経済統合の歴史的経緯

経済統合は、長い間アフリカが経済発展するための有効かつ主要な手段とみなされてきた。植民地支配の下で分断されたアフリカは、地理的には広い国土だが人口は比較的少ない国や国土面積自体が小さい国が多く、「小さい市場、小さい経済」の集合体という特徴を備えている。こうした国々が生産性の向上、貿易の増大、海外直接投資の流入などを基礎に経済を発展させるには、地域的に統合された一定の規模を有する経済圏を作り出すことが必要であると考えられたからである。

アフリカ各国が独立し始めた1960年代初頭には既に経済統合を志向する動きがみられる。1961年にはパン・アフリカニズムを基礎にアフリカ合衆国構想が主張され[片岡 2013, 133]、1963年にはこの構想が原動力となって経済統合を目的の一つに掲げるアフリカ統一機構(Organisation of African Unity: OAU)が設立された。それ以降、経済統合はアフリカの経済発展戦略の一つとして常に意識されてきた。例えばOAUが1980年に発表したラゴス行動計画(Lagos Plan of Action)では、ヨーロッパ経済共同体(European Economic Community: EEC)になぞらえたアフリカ経済共同体(African Economic Community: AEC)の設立が提唱され、1991年に採択されたAEC設立条約(1994年発効、通称アブジャ条約)では、アフリカ大での経済統合の詳細なロードマップが提示されている。アブジャ条約はAEC設立までのステップを6段階に分け、まずはアフリカの各地域で経済統合を進め、徐々にそれらを統合してアフリカ大陸大の自由貿易地域、関税同盟、さらには共同市場を設立し、最終的には2028年までに単一通貨アフロの導入、アフリカ中央銀行やアフリカ議会の創設などを通じてアフリカ大の経済統合を実現するという道筋を示した(表1)。2002年にOAU がアフリカ連合(African Union: AU)に改組された際には、アフリカ大陸発展のための共同戦略としてアフリカ統合計画が策定され、アブジャ条約の趣旨と統合までの道筋が再確認されている。

(出所)アブジャ条約第6条、およびAfDB[2014, 9]などにより作成。

(注*)アブジャ条約の発効から40年を超えないという条件があるため、遅くとも2034年までにはステージ6を完了しなければならない。

アフリカには現在14の地域経済共同体が存在する。AUは、その中の八つを地域的な経済統合の核として選定している(表22。それぞれの地域経済共同体は経済統合に向けた独自のロードマップを策定し、現在、自由貿易地域、関税同盟、あるいは共同市場や通貨同盟を結成するためのプログラムを実施中である。経済統合の進捗度合は各地域経済共同体で異なり、サヘル・サハラ諸国国家共同体(Community of Sahel-Saharan States: CEN-SAD)や政府間開発機構(Intergovernmental Authority on Development: IGAD)は域内の経済協力を進めている段階であり(アブジャ条約のステージ2)、COMESAやSADCは自由貿易地域の形成(同ステージ3)、EACは同じステージ3ではあるが既に関税同盟の結成を終え、共同市場の創設(アブジャ条約の規定外3)に向けて動いている。

(出所)各地域経済共同体ホームページ、AfDB [2014]、Mo Ibrahim Foundation [2014]などにより筆者作成。

(注)✔は実施済み(一部実施を含む)、●は進行中、×は未実施(年号は当初の実施目標年)、-は現時点では目標として掲げられていないことを意味する。

上述したように、2015年6月、これら八つの地域経済共同体のうちCOMESA、EAC、SADCの三共同体が広域自由貿易地域(TFTA)の形成に向けて第一歩を踏み出した。アブジャ条約では、ステージ3までは地域経済共同体レベルで、ステージ4以降はアフリカ大陸レベルでの経済統合が目指されている。TFTAは大陸大の自由貿易地域ではないためステージ4未満ではあるが、少なくとも地域経済共同体内における経済統合から地域経済共同体間の経済統合への移行を試みており、ステージ3以上を示す事例と捉えられる。さらにアフリカ大陸大の自由貿易地域であるCFTA形成に向けて政府間の交渉開始が宣言されるなど4、アフリカにおける経済統合は新たな局面を迎えている。

2. 経済統合を阻害する制度的要因

アフリカにおける経済統合は、自由貿易地域や関税同盟などの制度構築という観点においては、アブジャ条約のロードマップに沿って着実に進んでいるようにみえる。しかしその歩みは遅く、さらに各地域経済共同体で進捗度合いにかなりのばらつきがある。また域内における貿易関係の緊密化もあまり進んでおらず、枠組みはあっても内実が伴っていないのが現状である。本節では、既存の地域経済共同体が実質的な経済統合を進められていない制度的要因を検討する。

(1) 合意の柔軟性

関税制定権は古くから国家主権の一部であり、国家は主権行使の一形態として一方的に関税を課したり輸入品に規制を加えたりすることができる。このため二国間以上で相互に貿易自由化を行う場合は、通常、法的拘束力のある国際協定に基づいて実施される。なぜなら「ある種の規制を削減・撤廃するためには別の種類の規制が必要」であり[Winham 1992, 20]、貿易自由化の確実性や予見性、透明性を確保するためには、各当事国がどのような手段で貿易自由化を実施するのかを明示した文書と「その実施が国際法上の義務である」という認識が重要となるからである。

アフリカの各地域経済共同体で進められている貿易自由化もそれぞれ国際協定に基づいており、ルール・ベースの自由化といえる[Erasmus 2011, 22; Jordaan 2014, 5275。例えばCOMESA協定は36章195条で構成され、北米自由貿易協定(North America Free Trade Agreement: NAFTA)に比べれば詳細度は低いが、ASEANの貿易自由化を最初に規定したASEAN自由貿易地域(ASEAN Free Trade Area: AFTA)を形成するための協定(以下、AFTA協定)と比べると、かなり細かい規律を含んでいる。しかし、ルール・ベースの自由化でありながらアフリカの経済統合が規定通りに進まないのは、自由化の実施段階において各国の裁量が容認されているからである[Desta, Geboye and Hirsch 2012, 134]。

例えばSADCの場合、目標期限であった2008年に域内貿易の85%が自由化されたとして、セーシェル、アンゴラ、コンゴ民主共和国を除く12か国での自由貿易地域がスタートした6。残りの15%はセンシティブ品目に指定されていたが、多くの国で当初の目標どおり2012年までに関税が撤廃された。ただし、マラウィは通常品目の関税削減が遅れており、SADC貿易議定書が設定した自由化期限(2008年)を越えてもなお達成できていないし、ジンバブウェもセンシティブ品目の自由化期限である2012年に間に合わず、2年遅れの2014年に引き下げが実現した。また、モザンビークも南アフリカからの輸入を自由化したのは2015年である。しかし、こうした加盟国による自由化措置の実施の遅れは「柔軟性(flexibility)」の範囲内として認められ、不履行に対するペナルティが課されるわけではない。さらにジンバブウェは2012年1月に一部の製品に対して25%の輸入付加税を導入したり、同年11月に鶏肉に対する関税の課税形態を変更するなど、実質的な関税引き上げを実施している。SADC貿易議定書は発効時の水準よりも高い輸入税の導入を禁じており(第4条4項)、輸入税の中には関税のほか、関税と同等の効果をもたらす課金が含まれている(第1条)。このような自由化に逆行する政策も柔軟性の下で容認され、何らかの対抗措置がとられるわけではない。

国際協定上の合意事項が実施できない場合であっても、それが一定程度の範囲内であれば許容されることを「柔軟性」と呼び、近年、貿易自由化の過程、とりわけ世界貿易機関(World Trade Organization: WTO)における自由化交渉において発展途上国側から主張されることが増えてきている。メンバー間の経済発展段階に差がある場合、一律のコミットメントでは合意自体が成立せず、貿易自由化が滞ってしまうという問題を解決するために生まれてきた考え方であり、主に関税引き下げ期限(タイムフレーム)に関する柔軟性と、国際協定上の履行義務に関する柔軟性の2種類がある。

タイムフレームに関する柔軟性はアフリカの経済統合過程に特有なわけではなく、ASEANにおける貿易自由化のプロセスにも導入されている。例えば、2002年の「大胆な措置に関する声明(Statement of Bold Measures)」の中でASEAN先進6か国7の関税引き下げ目標期限を2003年から2002年に1年前倒しているが、この前倒しについては「with flexibility」という文言が付加されており、各国の取り組みに対して自由裁量が認められた[箭内2002, 78]。しかし、ASEANにおける柔軟性は異なるタイムフレームを制度として導入している点でアフリカにおける柔軟性とは異なる。ASEANは各国の経済発展段階やASEANへの加入時期を考慮して、後発のベトナム、カンボジア、ミャンマー、ラオスに対してはそれぞれ異なる自由化期限を設定しており、柔軟性を制度内に取り込んだ形で運用している。一方アフリカは、メンバー国すべてに一律のタイムスケジュールを課した上でその実施に関しては柔軟性の概念の下で各国の裁量が認められる仕組みとなっている8。このためタイムフレームの柔軟性が際限なく認められる可能性もあり、関税引き下げが遅れる一因となっている。各国が無理なく関税削減を実施し貿易自由化の実効性を上げるためには、段階的な自由化プロセスを導入するなど、柔軟性を制度化する仕組みが有効であろう。

また、国際協定上の履行義務に関する柔軟性は、ジンバブウェの輸入付加税の事例のように、国際合意と国内政策の優先度の問題である。この点でもアフリカとASEANでは異なった姿勢がみられる。ASEANの場合は民間企業が形成した分業・協力体制が域内に既に存在し、その動きを加速化あるいは円滑化するためにAFTA協定が結ばれた。貿易自由化という国際合意が各国政府の政策と一致しており、合意を積極的に履行する素地があった。またAFTA協定の法的拘束力が明確にされており、ASEAN各国政府はAFTA協定に基づくコミットメントの実施は法的義務であると認識している。一方、アフリカ各国もそれぞれの自由化の基礎となっている国際協定の法的拘束性は理解している。しかし、経済統合という目的自体が政治対話から始まっており、政治主導による政策先行の色彩が強い[ICTSD 2016, 4-5]。さらに政権が不安定な国が経済統合に参加する目的として、国際会議や国際協定締結の当事者となることにより政府の政治的正統性を誇示する点が指摘されている[Vanheukelom et al. 2016, 25-26]。このため、国際合意に基づく自由化実施よりも国内経済政策の安定した運営を優先させる場面が出てくる。その際に活用されるのが履行義務に関する柔軟性である。しかし、履行義務に関する柔軟性は、法制度として整備されているセーフガード措置9と異なり、どのような場合に柔軟性を主張できるのか、あるいはどの程度の柔軟性が許容されるのかといった条件や範囲に関する厳格な規定がない。そして、その活用については各国の裁量に委ねられている場合が多く、柔軟性の主張に歯止めがかけられない。アフリカでは、国際合意と国内政策の相違を棚上げしたまま統合に向けた制度が作られてしまい、結果として自由化が進まない現状をもたらしている。

(2) 履行確保手段の不備

ルール・ベースの自由化を進めるためには、合意の拘束性を担保するシステムの確立が重要となる。つまり、紛争解決手続きの司法化や合意不履行が生じた場合の保障・対抗措置の制度化などである。世界大での貿易自由化を進めているWTOは詳細な規定に基づく紛争解決手続きを有しており、広範な分野で統合を達成している欧州連合(European Union: EU)の場合は欧州司法裁判所が紛争解決手段として有効に機能している。一方、ASEANには裁判所といった司法制度は導入されておらず、紛争解決に関する大枠を規定した協定も存在するが充分に活用されていない10。実効性のある紛争解決手続きを欠くことから、関税削減を開始した当初はAFTAの実現を懐疑的にみる意見が多かった。しかし、2000年に保障調整措置11を導入し、さらに2004年には紛争解決手続きを強化することにより、貿易自由化の履行確保を制度的にバックアップする体制を整えてきた。

アフリカの場合、こうした国際協定上の義務の履行を確保する手段が整っていないのが問題となっている。まず表2に挙げられている八つの地域経済共同体のうち、裁判所を設置しているのはCOMESA、EAC、ECOWAS、SADCの四つであり、それ以外は共同体独自の紛争解決手段を持っていない。また、COMESA、EAC、ECOWAS、SADCについても、確かにそれぞれの設立協定の中に紛争解決手段に関する詳細な規定が存在するが、その有効活用を阻む要因がいくつか指摘されている[Gathii 2011, 265-267; Oppong 2011, 117-164]。まずは裁判官の独立の問題である。COMESA、EAC、ECOWAS、SADCのいずれの場合も裁判官の任命はメンバー国の首脳によって構成される組織―例えば、COMESAの場合はAuthority、EACの場合はSummitと呼ばれる最高意思決定機関―によって行われる。また、その身分の保証も充分ではない場合が多い。裁判の公正性を維持するために必要不可欠な裁判官の職権の独立が不十分であり、裁判官がメンバー各国の意向に左右される可能性がある[Oppong 2011, 120]。また、裁判所の管轄権の範囲がメンバー間で共有されておらず、裁判所の機能が制限される事例もある。例えばSADC裁判所の場合、SADC条約と関連文書が規定する活動領域全体に対して裁判管轄権を有しており(SADC条約第6条)、個人も裁判所に提訴することができる(2000年のSADC裁判所に関する議定書第15条)。2007年以降に提訴されたジンバブウェにおける人権関連の一連の事件に関して、SADC裁判所はジンバブウェの国家責任を認める決定を行ったが、ジンバブウェ政府はSADC裁判所の管轄権を否定し、決定の履行を拒否している。こうした事態を受け、2010年にSADC裁判所の活動は事実上の停止状態となり、2012年にはSADC首脳会議において正式に活動停止が宣言された。2014年にSADC裁判所に関する議定書が修正され、裁判所の管轄権はメンバー国間の紛争に限定された12

ただし近年、地域経済共同体の裁判所が各国の国際合意の履行を担保するシステムとして機能した事例が出てきている。事件の概要は以下の通りである。モーリシャスはCOMESA-FTAの参加国であり、2000年11月、COMESA条約の規定に基づいて域内からの輸入関税を撤廃した(COMESA条約第46条1項)。しかし翌2001年11月にモーリシャス政府はエジプトからの一部製品に対して40%の関税を課した。モーリシャスの塗料会社Polytol Paintはエジプトから塗料を輸入していたが、これにも関税が賦課された。これをCOMESA条約違反とみなしたPolytol社は2001年から関税が再度撤廃された2010年までに徴収された関税の返還を求めて、2012年2月、モーリシャス政府を相手取りCOMESA裁判所に訴えた13。2013年8月、COMESA裁判所は①Polytol社は個人のCOMESA裁判所への提訴を認めたCOMESA条約第26条により当事者適格を有するとし、②モーリシャス政府のCOMESA条約違反を認め、Polytol社から不法徴収した関税の返却を命じた。政府の自由化義務違反により不利益を被った私企業が地域経済共同体の裁判所を通じて損害賠償を実現した画期的なケースであり、今後、裁判所による紛争解決手続きが各国政府による自由化不履行の歯止めとなることが期待される。

(3) メンバーシップの重複

アフリカの経済統合の特徴として、一つの国が複数の地域経済共同体に参加する、いわゆるメンバーシップの重複問題がある。例えばケニアは、主要8地域経済共同体のうちCEN-SAD、COMESA、EAC、IGADの四つに参加し、ブルンジ、コンゴ民主共和国、ジブチ、エリトリア、リビア、ウガンダ、スーダンなどは三つの地域経済共同体のメンバーである。この結果、同一の品目なのに複数の関税率が存在したり、適用される原産地規則が異なったりするため、輸出入の手続きが煩雑となりコストも増加する14。民間企業の多くはこうした状況に対応する能力が不十分であり、結局、特恵関税制度を活用しきれていないのが現状である。

また、WTO協定上、二つ以上の関税同盟に同時に参加できないため、例えばEACとSADCに参加しているタンザニアは、SADCの経済統合が進展し関税同盟となるときに、どちらかから脱退するか、EACとSADCの域外共通関税を同じにするよう交渉しなければならなくなる。こうした問題を広域自由貿易地域を形成することで一気に解消しようとしたのがTFTAであるが、思惑通りには進んでいない。

このようなメンバーシップの重複が許容される背景として、地域経済共同体の制度的拘束性に対する意識が希薄な点が指摘されている[Gathii 2011, 72]。アフリカ各国は経済統合の基礎となっている国際協定を拘束的な自由化義務を規定したものというよりは、むしろ、様々な分野における経済協力のための枠組みと捉えている。このため、各国の経済戦略の一つとして、複数の地域経済共同体に同時に参加しその時々で自国に最もプラスになる共同体を選択するという発想がでてくるのである。この点は上述した「合意の柔軟性」にもつながっている。

3. 地域経済共同体間の経済統合

東部・南部アフリカに既存の三つの自由貿易圏を合体させて一つの広域自由貿易地域を形成するTFTA構想が提唱されたのは2005年のことである。2008年に正式交渉が開始され、2015年6月にエジプトで開かれた第3回三地域経済共同体サミットにおいてTFTA協定が採択された。TFTAにはCOMESA、EAC、SADCのメンバー26か国15が参加することになっており、実現すれば人口6億2,500万人、GDPの規模では1.3兆ドル[Zamfir 2015, 2]という巨大市場が出現する。ただし、TFTA形成に伴い、組織としてのCOMESA、EAC、SADCが消滅するわけではない。アブジャ条約では、各地域経済共同体は大陸大での経済統合に向けたステップとして位置づけられており、明記はされていないが、広域の自由貿易地域―TFTAやCFTA―が形成された時点でこれら地域経済共同体はその役割を終えるものと想定されていた。しかし、各地域経済共同体は長年にわたり貿易以外の経済協力関係、例えば食品安全、医療、気候変動など様々な分野で協力しており、TFTAが形成されたからといって、すぐに解体できる存在ではなくなっている。このため、TFTAが形成される過程とは別途、それぞれがこれまで通りCOMESA、EAC、SADCとして存続し、地域協力を促進させる中心的機関として機能していくことになる。

TFTA協定の採択を契機にアフリカにおける経済統合過程の進展が期待されている。しかし、TFTAは前節で指摘したアフリカの経済統合が抱える制度的困難に関して具体的な対応策を組み込んでいない。このため、これまでと同様、実質的な貿易自由化がすぐには進まない可能性がある。一番問題となるのは合意の内容が曖昧なことである。TFTA協定は枠組み協定であり、詳細な手続きは附属書に盛り込まれることになっている。しかし、関税引き下げスケジュール(附属書1)、貿易救済措置(附属書2)、原産地規則(附属書4)はTFTA協定採択までに合意できず、その後も交渉が続いている16。関税引き下げスケジュールや原産地規則などは自由貿易地域を形成するために必要不可欠な内容であり、それらについての合意がない状態では各国は具体的な関税削減の手続きを開始できない。また具体的な規則の定まっていないTFTA協定が発効しても、各国がどのような法的義務を負うのかも不明である。2015年6月のTFTA協定採択の際、メンバー国から相反する二つの意見が出された。一つは、署名・批准手続きを進めていくためには最終合意された文書としての協定が最低限必要であり、積み残されている課題について速やかに合意した上で採択すべきとの主張であった。他方で、たとえ未合意の分野があってもTFTA形成に向けた積極姿勢を示すことが統合に向けたモメンタムを維持する上で重要と考え、TFTA協定に進んで署名する国も多かった17。本来、協定が未確定な状態では採択や署名さらに批准といった法的手続きを進めることは難しい。しかしTFTA協定の場合、当事国の間で合意に対する柔軟性、つまりは協定内容の実施に関しては各国の裁量に委ねられているという認識が共有されていたからこそ、見切り発車的な協定採択が可能であったと考えられる。

紛争解決手段についてはTFTA協定の附属書13が紛争解決手続きについて規定している。常設の裁判所を持たず、事件ごとに審理する小委員会(パネル)を設置するスタイルをとっており、基本的にWTOの紛争解決手段を踏襲している。ただし、パネル設置に対する拒否権が1回に限定されているWTOと異なり、パネルの自動設置が制度的に担保されておらず、実効性が伴うのか疑問視されている[Jere 2013; Siziba 2016, 31-3318

メンバーシップの重複に関しては、個々の地域経済共同体が抱えるよりもさらに複雑な状況に陥っている。もともとTFTA創設の目的の一つとして、地域経済共同体間でメンバーシップが重複していることに起因する適用関税率の混乱を解決することが挙げられていた。このためTFTA構想が提起された当初は、地域経済共同体間での統合、すなわちCOMESA、EAC、SADCの枠組みで形成された既存の自由貿易圏(COMESA-FTA、EAC関税同盟、SADC-FTA)をつなぐことで、参加国間での関税障壁のない自由なモノの流れが実現できると考えられていた。しかし、COMESAとSADCの場合は、それぞれのFTAに参加していない国があり、三つの自由貿易圏の単純な合体ではすべてのTFTA参加国をカバーできない。結局、三つの自由貿易圏はそのままとし、それに加えて現時点で自由貿易関係にない二当事者間で個々に関税引き下げ交渉を行い、貿易自由化を実現していくことになった。現在、エジプトとSACU、EACとSACUなどで交渉が進められているが、個々の当事者間の交渉次第で適用される特恵関税率が異なる可能性が高い。その結果、当初想定されていたような単一化された広域の自由貿易地域ではなく、むしろ逆の状況―二当事者間に適用する関税率表が網の目のように存在する複雑な状況―に陥ることになる。そして、適用関税率以外の貿易ルール―例えば輸入数量制限の禁止やアンチダンピング、セーフガードといった貿易救済措置など―についてはTFTA協定あるいはその附属書に規定され、すべての国に適用される共通ルールとなる。つまり、TFTAは網の目状の関税率表と全体をカバーする規定集という複雑な二層構造の協定に基づいて貿易自由化が進められることとなり、その速やかな進捗や実効的な運用は容易ではない。

これらに加え、TFTA実現にはまだ多くの課題が残されている。例えば、モノの移動に必要な輸送手段のインフラが十分に整備されていないため、制度的には自由貿易地域となってもそれを活用しきれず、実際の貿易の増大につながる可能性が低いと指摘されている[Erasmus 2015, 15]。また、TFTAは関税削減以外にも、衛生植物検疫措置や基準・認証制度のハーモナイゼーション、あるいは知的財産権制度の各国間の整合といった貿易円滑化に関する協力を掲げている。経済統合を確実に進展させるためには、関税削減措置をはじめとする貿易自由化のみならず、貿易円滑化も同時に進めていく必要がある。しかし、参加メンバーの数が増えるとそれだけ制度の相違の幅も広がるため、これまでの各地域経済共同体における取り組み以上の努力が求められる。

TFTA協定の発効には全参加メンバーの3分の2、すなわち14か国以上の批准が必要となる(TFTA協定第39条)。現在18か国が署名しているが、TFTA協定採択から2年が過ぎた時点でも批准国はエジプト(2017年5月批准)の1か国のみである19。各国の署名や批准手続きが進んでいないことから、COMESA、EAC、SADCは各国に対して手続きの進捗を強く促している。こうした動きを受け、例えばEAC各国は2017年3月までに批准する意向を示していた。しかし宿題として残されていた関税引き下げスケジュールや原産地規則について依然として協議中であるため、批准の目標期限を2017年12月に延長した20。TFTA協定発効までには相当な時間がかかると予想される。

むすび

現在アフリカでは、地域経済共同体レベルでの統合、複数の地域経済共同体にまたがる統合、そしてアフリカ大陸大での統合という三つのレベルで経済統合が進められている。2015年6月には、アフリカ大陸の半分以上をカバーするTFTAの形成が合意され、アフリカ大陸大でのCFTAに向けた交渉も開始された。これらの状況から考えると、アフリカにおける経済統合は順調に進んでいるようにみえる。しかし、地域経済共同体内の貿易関係はさほど深化しておらず、広域の自由貿易地域も具体的な関税削減といった動きは未だ始まっていない。

アフリカにおける経済統合の実質的な進展を阻んでいる要因は様々あるが、経済統合の制度的な側面に関してはアフリカ特有の問題点が指摘できる。まず、アフリカも他の地域と同様に法的拘束力をもつ国際協定に基づいて経済統合を進めているが、アフリカの場合は合意に対する柔軟性が広く認められており、各国が自国の裁量で自由化措置を遅らせたり、あるいは逆行させたりする状況が生じている。また、自由化義務の履行を確保する上で重要となる紛争解決手段が整備されていないか、裁判所が設置されていても充分に機能していない。さらに、地域経済共同体のメンバーシップが重複していることにより原産地規則など手続きに関する規定が複雑に絡み合い、特恵関税の利用にコストや時間がかかるため、自由化措置は実際には十分活用されていない。

現在取り組まれているTFTAは、こうした制度的困難に対する具体的な対応策を組み込んでいないため、実質的な貿易自由化がすぐには進まない可能性が高い。当初は、メンバーシップの重複を解消するために地域経済共同体間での統合を目指したが、COMESA、EAC、SADCの枠内で形成されている自由貿易地域や関税同盟はそのまま存続し、それらに二当事者間の新たな特恵関税率表が付加される形でTFTAを形成することとなった。このため、適用関税率という観点からは、却って複雑な状況に陥ることが予想される。加えて、自由化の基礎となる国際協定の一部が未合意であったり、そもそも協定の発効目途も立っていない状況を勘案すると、強力な政治的意思が働かない限りTFTAの早期実現は難しく、その実効性も懐疑的である。アフリカにおける実質的な経済統合を進展させるためには、アフリカの経済統合の特徴から生じる問題点を踏まえた上で、それらを解決する措置を講じる必要がある。

本文の注
1  アフリカの域内貿易比率は2015年時点で15.7%(うちサブ・サハラ以南のアフリカで18.7%)となっており、ヨーロッパの66.2%、アジアの61.4%、アメリカの47.8%と比べて低いレベルにとどまっている(UNCTADのデータベースSTATに基づく)。

2  残りの六つの地域経済共同体は、①同じ地域に存在するより大きな地域経済共同体に包摂されるもの、例えばSADCに包摂されるSACU、ECOWASに包摂される西アフリカ経済通貨同盟(Union Economique et Monétaire Ouest-Africaine: UEMOA)、②主要な目的が経済統合というよりも地域の安定やインフラの共同整備といった経済協力となっているもの、例えば西アフリカのマノ川同盟(Mano River Union: MRU)や東アフリカの島嶼国で構成されるインド洋委員会(Indian Ocean Commission: IOC)などである。

3  アブジャ条約が地域経済共同体の役割として想定しているのは関税同盟の創設までであり、その先の経済統合プロセス―共同市場や通貨同盟の創設―については、大陸大で実施するロードマップとなっている。しかし、各地域経済共同体の中には独自に共同市場や通貨同盟を目標に掲げているものもある。

4  CFTA形成の道筋として、まずTFTAを核とし、その上でTFTAに参加していないECOWAS、CEN-SAD、ECCAS、AMUが①TFTAに対応するような広域FTAを形成したうえで、最終的にTFTAと統合する、もしくは②それぞれが直接TFTAに参加する、などのアイディアが出されている。

5  EACの経済統合はEAC設立条約を基礎に関税同盟設立議定書に基づいて実施されており、詳細規定として原産地規則やセーフガード、紛争解決などに関する規則が附属書として採択されている。またCOMESAはCOMESA設立条約や関税同盟に関する理事会規則、SADCはSADC貿易議定書を基礎としている。

6  セーシェルは2004年7月~2008年8月までSADCを脱退していたため、SADC自由貿易地域への参加が遅れていたが、2015年に関税品目全体の91.2%の関税を撤廃し、SADC自由貿易地域に参加した。

7  ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイの6か国。

8  SADCの場合、経済発展段階に応じてメンバー国を三つのレベルに分類し、異なる関税削減開始時期を設定しているが、削減達成の期限については一律となっている。

9  特定産品の輸入急増により国内産業が重大な損害を受けた場合、輸入国政府が一定の条件の下で国際協定上の義務に反して講ずることのできる緊急措置(一時的な関税引き上げや輸入数量制限など)のこと。WTOにはセーフガードに関する国際協定があり、NAFTAをはじめとする多くの地域間・二国間FTA/EPAにはセーフガード条項が挿入されている。

10  そもそも、紛争解決に関する議定書が締結されたのはAFTAのスタートよりも3年遅い1996年である。

11  ASEAN加盟国が、非常に困難な状況に直面していることを理由にAFTA協定の下での自由化を一時的に留保する際、それによって他のASEAN諸国が実際に被る、あるいは被ると予想される損害を補償しなければならないとする制度[箭内2002, 81]。

12  しかし批准国が規定の数に達しておらず、修正議定書は未だ発効していない。

13  これに先立ち、Polytol社はまずは国内における救済措置を求めてモーリシャスの国内裁判所に提訴している[COMESA Court of Justice 2013]。また、COMESA裁判所の判決後、モーリシャス政府は控訴していたが、2015年2月に和解により解決した[COMESA 2015, para 132 and 383]。

14  例えばテレビを南アフリカから輸入する際のEACの域外共通関税が30%であるとすると、タンザニアはSADC-FTAに加入しているため、SADC-FTAの関税削減義務として南アフリカからのテレビの輸入を0%にしなければならない。その結果EACの域外共通関税に齟齬が生じることになる(タンザニア以外のEACメンバーの対南アフリカのテレビの関税は30%なのに、タンザニアは0%)。実際、SADC-FTAがスタートしたとき、タンザニアは問題を解消するために複雑な手続きが必要となった。現状では、タンザニアがSADC-FTAを通じて輸入する場合、EACの域外共通関税の適用を免除する特別措置で対応している[IMF 2008, 59]。しかし、タンザニアがSADC各国からEACへの迂回貿易の拠点として利用されかねず、問題が完全に解決したわけではない。

15  2016年にCOMESAとEACに加盟した南スーダンがTFTAに参加するかについては、現時点で不明である。

16  関税引き下げの具体的な実施スケジュールについては、5~8年で関税品目の85%の自由化を実施するという大枠が示されただけであり、年度単位の引き下げ目標などがスケジュール化されているわけではない。また残りの15%については引き下げ期限そのものも含め、継続交渉となった。原産地規則についても各地域経済共同体が現在使用しているルールが異なることから、それぞれが自身のルールを汎用化するよう主張し、合意に至らなかった。

17  The Independent紙(ウガンダ), “SADC, EAC, and COMESA seek to implement Tripartite Free Trade Area,” 2016年10月26日付、(https://www.independent.co.ug/sadc-eac-comesa-seek-implement-tripartite-free-trade-area/)。

18  しかし、具体的な内容については未だ交渉中であり、紛争解決手段としての有効性について現時点では判断できない。

19  The East African紙, “Cape-to-Cairo free trade area closer,” 2017年6月22日付、(http://www.theeastafrican.co.ke/business/South-Africa-to-Egypt-free-trade-area-closer-/2560-3981584-66mroc/index.html)。

20  The East African紙, “Bloc puts off ratification of tripartite trade deal,” 2017年5月1日付、(http://www.theeastafrican.co.ke/business/Bloc-puts-off-ratification-of-tripartite-trade-deal-/2560-3909824-ab044k/index.html)。

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