アフリカレポート
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資料紹介
清水 貴夫 著 『ブルキナファソを喰う!――アフリカ人類学者の西アフリカ「食」のガイド・ブック――』 京都 あいり出版 2019年 277+カラー図版8 p.
岸 真由美
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2019 年 57 巻 p. 55

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本書は、「アフリカを胃袋で知る男」である人類学者の著者が自身の豊富な食べ歩き経験にもとづいて書いた、ブルキナファソのグルメガイドである。しかし、単に料理やお店を紹介するだけではない。活気あふれる食堂の様子や店を切り盛りする店主の人柄、街の様子が生き生きと描かれ、ブルキナファソを含む西アフリカの食文化や歴史にも触れられている。

本書で取り上げられる料理は、大きく練粥、コメ料理、マメ料理の3つである。まず練粥は、雑穀を挽いた粉を湯ごねした、日本の「そばがき」のような食べ物である。練粥はアフリカ全域で一般的な主食で、材料はソルガムやミレットなどの雑穀である。ブルキナファソでは「ト」と呼ばれている。練粥はソース(シチュー)と一緒に食べるが、このソースが牛皮やスンバラ(納豆のような発酵豆)を使ったものや、オクラやバオバブを使ったものなど、とても多様である。しかし、近年は都市部を中心に安価な輸入メイズやコメに雑穀が押され、練粥もミレットやソルガム離れが進んでいるという。

著者によればブルキナファソのコメ料理はセネガル由来である。コメ食はフランス植民地期にセネガルで始まり、現在ではブルキナファソのほか西アフリカ全体に浸透している。そのコメ料理も多彩である。干し魚や野菜を煮込み、油をたっぷり加えたスープで炊いた濃厚な「リ・グラ」(油めし)や、干し魚と巻貝の出汁にトマトの酸味がさわやかな混ぜご飯「ドモダ」などである。コメは粒が割れた破砕米が多く使われる。これは植民地期に仏領インドシナから全粒米がフランス本国に送られ、値段が安い破砕米がセネガルに送られたことに因るという。

マメ料理もブルキナファソの食文化では欠かせない。とくにササゲは毎日のように食卓に上る。調理方法はコメや雑穀と一緒に炊き込んだり、ペーストにしてスナック風にしたり、トマト煮にしてパンにはさんだり、これもさまざまである。ササゲがこれだけ食べられるのは、収穫が比較的安定しており、雑穀が取れないときの救荒食の意味合いがあるからである。

本書は楽しく(美味しく)読めて、アフリカの食文化や歴史に関する知見も得ることができる。巻末には「ワガドゥグの旨いメシ屋」の地図も収録されている。読めばきっとブルキナファソに行きたい気持ちに駆られるはずだ。

岸 真由美(きし・まゆみ/アジア経済研究所)

 
© 2019 日本貿易振興機構アジア経済研究所
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