アフリカレポート
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資料紹介
Maggie Dwyer and Thomas Molony, eds. Social Media and Politics in Africa: Democracy, Censorship and Security. London: Zed Books 2019 299p.
粒良 麻知子
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2020 年 58 巻 p. 22

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本書は、近年のサハラ以南アフリカ諸国におけるスマートフォンやソーシャルメディアの急速な普及が、政府や人々の政治関与にどのような影響を与えているかを初めて包括的に分析した本である。ソーシャルメディアとは、利用者が作成した文章、画像、動画等を共有することができる双方向のメディアを指し、具体的にはFacebook、Twitter、YouTube、Instagram、WhatsApp(世界最大のスマートフォン向けアプリ、日本のLINEに類似)が取り上げられている。本書の分析によれば、ソーシャルメディアはアフリカにおいて政治の自由化を促す手段となりうる一方、それを厳しく取り締まる政府もあり、既存の権力構造を強化することもある「諸刃の刃」であるという。

本書の構成は、第1章で本書の概要が示された後、第2~13章はアフリカ9カ国(ソマリア、ジンバブウェ、南ア、ケニア、シエラレオネ、セネガル、ナイジェリア、ブルンジ、タンザニア)と1地域(東アフリカ)の事例研究となっており、最後にあとがきとして、アフリカのデジタル分野における研究の今後の方向性が提示されている。

各章の事例研究は特定の現象を掘り下げていて興味深いが、本書全体としての知見については、ソーシャルメディアは「諸刃の刃」であるという上述の点にとどまっていることから、やや物足りなさを感じた。しかし、第1章とあとがきに、ソーシャルメディアはそれ自体が政治を変えるのではなく、政府や人々がそれをどう使うかによって変化が起きたり起きなかったりするため、それぞれの歴史的文脈を理解することが重要であると書かれており、本書は各国の専門家による丁寧な事例研究に重きを置いたということなのだろう。

いくつか印象に残った章を紹介したい。例えば、第2章には国営あるいは主要なテレビ・ラジオ局のないソマリアで、政権関係者がソーシャルメディアを利用して国民の支持を得ようとする様子が記述されており、ソマリアの政治情勢の特徴が示されていて興味深い。また、第3章には、ムガベ政権下のジンバブウェにおいて、YouTubeの動画から始まった反政府運動が、動画の投稿者がもともと意図していなかった形で発展していった経緯と、投稿者の国外逃亡によって運動が勢いを失っていく様子が描かれており、ソーシャルメディアを通じた市民活動の流動性が明らかになっている。また、これらの章にはそれぞれ鍵となるYouTubeの動画があり、それを見て臨場感を味わいながら読み進めたが、これはソーシャルメディアについての研究書の面白さの一つと言えるかもしれない。

粒良 麻知子(つぶら・まちこ/アジア経済研究所)

 
© 2020 日本貿易振興機構アジア経済研究所
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