アフリカレポート
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資料紹介
ジェロー・マグラン、アラン・デュブレッソン、オリヴィエ・ニノ 著 『地図で見るアフリカハンドブック』 鳥取 絹子 訳 東京 原書房 2019年 170 p.
箭内 彰子
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2020 年 58 巻 p. 25

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本書は、アフリカが直面している37の課題を取り上げ、それぞれ4ページという短い紙幅の中で地図や図表を駆使しながら解説しているハンドブックである。アフリカの現状と本書の目的を示した「はじめに」に続く36のトピックスは、人口、環境、経済、国家・社会、国際関係の5つのテーマに分けられているが、一つ一つが独立しているので、どこから読み始めても、また関心のあるトピックスだけを選んで読み進めても理解できるように構成されている。

本書の最大の特徴は、全てのトピックスに必ずいくつかの地図が挿入されていることである。アフリカ全土の地図、一部の地域地図、あるいは特定の都市やプロジェクトの地図など、様々な種類の地図が使われている。今、アフリカで何が起きているのか。多面的なアフリカの現実を切り取り、幅広い参考文献から可能な限り直近のデータを集め、それを色鮮やかな地図に落とし込んで表現しようと試みている。例えば教育と開発に関する項目では、よくある識字率や就学率に加え、教員一人が受け持つ生徒数や男子と女子の就学率の差などを各国別の地図で示したり、「経済成長で利を得るのは誰か?」という項目では、ジニ係数で色分けされた国別地図に億万長者数のデータを重ねるなど、様々な側面からアプローチすることでトピックスの現状をより深く掘り下げている。本書に収められている地図は文章よりも雄弁であり、地図の利点を最大限に活かしたアフリカ解剖書といえよう。グラフや図表の使い方も効果的である。

しかし「カラフルな地図がいっぱいあって読みやすそう」という第一印象から、いわゆる分かりやすい概説書と思って手に取ると少し戸惑うかもしれない。地図も文章も内容が深いのである。地図や図表の解説が必ずしもされているわけではないので、地図を読み解くのに時間がかかる。読み手の関心度合いや知識の量によって、地図から得られる情報に差が出る可能性もある。

もちろんこの点はマイナスとは限らない。本書はアフリカに関心を持つ初学者のための入門書にもなれば、専門家向けの研究書にもなるということである。地図が表現している事実をそのまま理解することもできれば、いくつかの地図を比較して、その背景に潜んでいる要因を知りたいという研究意欲に火をつけてもくれる。地図好きな読者であればなおさら、時間を忘れて楽しみながらアフリカを知ることのできる一冊である。

箭内 彰子(やない・あきこ/アジア経済研究所)

 
© 2020 日本貿易振興機構アジア経済研究所
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