アフリカレポート
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資料紹介
児玉 由佳 編 『アフリカ女性の国際移動』 千葉 アジア経済研究所 2020年 vii+308 p.
児玉 由佳
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2020 年 58 巻 p. 95

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本書は、2017年度からの2年間に実施されたアジア経済研究所の研究会の成果である。研究会の目的は、サブサハラ・アフリカ女性の国際移動に注目し、移動の動機や経路、そして移動後の生計活動やジェンダー関係の変容を解明することであった。 

サブサハラ・アフリカの人々の移動は多様な形をとる。特に特徴的なのは、労働目的の移動とともに難民としての移動が多いことである。本書の構成も、前半は労働目的の移動、後半は難民としての移動となっている。序章に続く最初の3章は、エチオピアから中東諸国、ケニアからアメリカ、モザンビークから南アフリカへの労働目的での移動を扱っている。4章以降は、コンゴ民主共和国から南アフリカ、ソマリアからイギリス、サブサハラ・アフリカ諸国からフランスへの難民としての移動を扱っている。

各章で異なる事例を扱っているが、①移動者本人の人的資本、②出身地における女性をとりまく状況、③移動先における移民政策や環境の3点について各章で検討することで比較を可能にし、移動の多様性をもたらすメカニズムを明らかにした。まず、出身国で得られた人的資本の違いが移動先で得られる職種の違いを生み出していた。そして、移民労働者と難民認定された移住者では得られる権利も異なっており、後者は移動先国での社会保障を享受することが可能となっていることが明らかとなった。その一方で、具体的な事例の蓄積から見えてくるのは、移動理由はどうあれ、人びとは移動先で生計を営む必要があり、難民であってもより良い生活を営むために移動先国を選択している場合も多いことである。自発的移動か非自発的移動かで人の移動を分類することは困難なのである。

2020年に入ってから新型コロナの感染拡大で人の動きは停滞しているが、その直前まで人々は活発に国境を越えた移動を行っていた。サブサハラ・アフリカの女性の国際移動も例外ではなく、着実に移動者数は増加していたものの、アジアにおける女性の国際移動の研究蓄積と比較するといまだ研究蓄積は少ない。サブサハラ・アフリカの女性の国際移動に関する比較研究を行った日本語の文献はこれまで無かった。本書を機に、さまざまな議論が喚起されてアフリカに関しても移民研究が進展することを期待したい。

児玉 由佳(こだま・ゆか/アジア経済研究所)

 
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