アフリカレポート
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高野 秀行 著 『幻のアフリカ納豆を追え!――そして現れた〈サピエンス納豆〉――』 東京 新潮社 2020年 366 p.
岸 真由美
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2021 年 59 巻 p. 105

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納豆は日本独特の食べ物というイメージがあるが、実は日本以外のアジア諸国や、日本からは遠く離れたアフリカにも納豆がある。本書は、ノンフィクション作家である著者がその納豆を追い求めて韓国と西アフリカ諸国を取材したドキュメンタリーで、『謎のアジア納豆——そして帰ってきた〈日本納豆〉』(2016年)の続編である。

アフリカ大陸のなかで納豆が食されているのは西アフリカ地域で、本書で取り上げられているのはナイジェリア、セネガル、ブルキナファソの3カ国である。原料となる豆は日本では大豆だが、西アフリカではおもにパルキアというマメ科の樹木の実である。

ナイジェリアでは納豆はダワダワと呼ばれ、煎ってから煮てひき割りにし、ひょうたん(納豆菌がいる)に入れて発酵させる。オクラやバオバブの葉などのスープの調味料として使われるのが一般的だ。常温保存できるように、できあがった納豆を臼でひいてから平たく伸ばし、せんべい状にして乾燥させる。セネガルではネテトウと呼ばれる。豆の形を残した塩辛い半生のもの、乾燥したもの、つぶして固めスモークしたもの、粉末状のものなどさまざまな形があり、スープや炊き込みご飯の調味料として使われる。ブルキナファソではスンバラ。豆の形を残して球状に丸めるのが基本で、これを炊き込みご飯やクスクス、スープの調味料として使う。

日本では味噌・醤油は麹菌、納豆は納豆菌で発酵させ、前者と後者はまったく異なる食品として扱われるが、韓国では味噌も醤油も発酵の最初の段階で麹菌と納豆菌の両方が使われ、チョングッチャン(納豆汁)の納豆は味噌や醤油と同じ「醤類」として括られている。味噌や醤油の起源は肉や魚を麹と塩で発酵させたものというのが通説だが、本書は韓国やアフリカの例から、納豆菌で豆を発酵させたものをもうひとつの起源とする可能性に言及している。日本でも、今でこそ納豆は豆の形を残したまま食べることが多いが、昔は納豆汁のような食べ方が普通だった。どうやら納豆と味噌の境目はわたしたち現代の日本人が考えているほど明確ではないのだ。

本書はやや厚めの本だが、著者の語り口が平易かつユーモアたっぷりで、ぐいぐい引き込まれて一気に読める。それだけではなく、しっかりした取材と調査をもとに、納豆をめぐる人びとの暮らしや社会経済的な背景なども丁寧に説明されている。納豆とアフリカに関心をもつ方にもそうでない方にもお薦めしたい。

岸 真由美(きし・まゆみ/アジア経済研究所)

 
© 2021 日本貿易振興機構アジア経済研究所
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