アフリカレポート
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資料紹介
川島 真・遠藤 貢・高原 明生・松田 康博 編 『中国の外交戦略と世界秩序――理念・政策・現地の視線――』 京都 昭和堂 2020年 261 p.
津田 みわ
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2021 年 59 巻 p. 21

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アフリカ諸国でのインフラ建設をはじめとする経済的な展開、世界的な政治・軍事的影響力の増大など、今世紀に入ってからの中国と世界との関わりが「新たな相貌を示す」との認識に立ち、中国の世界展開をいかに捉えるべきかを多角的に考察したのが本書である。タイトルには表れないが、少なくない分量がアフリカの分析に充てられており、アフリカ研究の書としての重要性も備えている。まず第1部「中国の世界秩序観と対外政策」は中国側の分析に軸足をおき、第1章が中国の一帯一路構想を、第2章は通常の政府開発援助の定義と異なる中国の対外援助をとりあげる。習近平政権発足後の政府首脳の発言などをテキスト分析したのが第3章である。貧困国を支援する義務とウィンウィンの関係双方を重視する「正確義利観」などの理念が丁寧に辿られる。

第2部は「アフリカと中国」と題され、全体がアフリカに関する分析に充てられる。第4章は、難民・テロ・食糧・貧困など「諸問題を含み混んだものとしてのアフリカ問題」が人類的課題だとし、これまで主として先進国グループが負担とコントロールを試みてきたこの問題に、「中国はみずから、しかも疾走して飛び込み」「中国の国力に比してより重い比重で引き受けた」と見立てて読み応えがある。アフリカにおける中国に対する認識が多様であることを、さまざまな調査結果と学術研究、報告書を用いて明示したのが第5章である。ザンビアの事例からは、一口に「中国認識」とはいっても、その時々の選挙キャンペーンのあり方などに結果が強く左右されるものである可能性が説得的に示されている。北はエリトリアから南はタンザニアに至る東部アフリカ諸国に対する中国からのアプローチを、中国側の資料を用いて丹念に辿ったのが第6章である。2012年までの首脳級の交流や協定類の締結が詳細に提示され、この地域への関与の基礎が胡錦濤政権期には形成されていたことが明示される。続く第3部には「中国の対メコン地域諸国援助」(第7章)、「中国の対北朝鮮援助」(第8章)、「中南米地域をめぐる中台関係」(第9章)が並び、第2部で示されたアフリカの事例が相対化される。

アフリカ研究者の多くは、英仏諸語や現地語を解すことはできても、中国語の資料は読めないことが多いのではないだろうか。本書はそこに架橋する意義も果たすだろう。それぞれの地域に精通する研究者が集まって初めて可能になった成果であり、共同研究の強みが十全に発揮された一冊である。

津田 みわ(つだ・みわ/アジア経済研究所)

 
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