アフリカレポート
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資料紹介
Nojeem A. Amodu, Corporate Social Responsibility and Law in Africa――Theories, Issues and Practices――. Abingdon and New York: Routledge 2020 xiv+235 p.
箭内 彰子
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2021 年 59 巻 p. 23

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企業が利潤を追求するのは自然な姿であるが、利潤を上げるために環境を破壊したり労働者を不当に働かせたりしてよいわけではない。企業は利潤を追求すると同時に、自身の企業活動が経済や社会に与える影響を考慮しなければならない。そして、株主だけでなく、その企業の経営者や従業員、取引先あるいは消費者、さらには地域社会などあらゆる利害関係者の要求に対して適切に対応していく責任がある。こうした「企業の社会的責任(CSR)」の考え方に基づき、近年、環境対策や労働環境の改善、地域社会への貢献といったCSR活動に積極的に取り組む企業が増えている。その中心は確かに欧米企業であるが、アフリカのビジネス界にもCSRの慣行が浸透しつつある。本書は、CSRの理論、課題、そしてその実践について法制度の側面から考察した研究書であり、アフリカにおけるCSR活動を持続可能な開発と連関させながら効果的に実施していくための新しいメカニズムを提案している。

全体は大きく3つのパート――CSRの概念や理論を検証しCSRを規律する法的枠組みを概説している第1部、ナイジェリアと南アフリカのケーススタディを行っている第2部、アフリカの地域統合とCSRの関係性を考察している第3部――に分かれている。いずれのパートも具体的な理論や法律の条文を引き合いに説明されており、とても読み応えがある。特徴的なのは、現状の法的枠組みに対して批判的視点が貫かれていることであろう。たとえば、CSR活動を規律する枠組みは法的拘束性を伴わない自主規制的なものやソフト・ロー的なものが多いが、そうした緩やかな規律ではグリーンウォッシング企業(環境配慮をしているかのように上辺だけ見せかける企業)を排除することができない。そこで各国の国内法とりわけ会社法の整備が必要だとの主張が出てくるが、たとえ法的拘束力のある法律でCSRを規律したとしても、それが表面的な定形句だったり、国際的な行動原則の一般的な文言をなぞるだけのものでは実効性に欠けると著者は指摘する。

サプライチェーンが国際化するのに伴い、CSRと貿易の関係性が深まっている。アフリカの地域統合が進展するなかでCSRがどのように扱われているかを考察している第3部でも、著者は、アフリカ大陸全体での自由貿易圏形成を目指して締結された貿易協定にCSRに関する規律がほとんどないことを厳しく批判し、CSR条項を貿易協定のコアとして取り入れていくべきと主張する。多国籍企業に搾取されてきた状況をCSRを導入することによって改善するという、アフリカ特有の議論にも触れられており、アフリカにおけるCSRについて深く考えさせられる一冊である。

箭内 彰子(やない・あきこ/アジア経済研究所)

 
© 2021 日本貿易振興機構アジア経済研究所
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