アフリカレポート
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資料紹介
Alex Armand, Alexander Coutts, Pedro C. Vicente, and Inês Vilela, “Does Information Break the Political Resource Curse? Experimental Evidence from Mozambique.” American Economic Review, Vol.110 No.11 2020 pp.3431-53.
福西 隆弘
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2021 年 59 巻 p. 25

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豊かな天然資源の賦存は、時として開発途上諸国の経済成長を抑制する可能性があることが、とくに1990年代以降に論じられてきた。「資源の呪い」とも呼ばれる現象は、資源開発がオランダ病や紛争を誘発するほか、政治的リーダーによる資源レントの収奪が経済活動に悪影響を及ぼす(political resource curse)ことが原因だと考えられている。本論文は、大規模な天然ガスの埋蔵が確認されたモザンビーク北部を題材に、後者のメカニズムをランダム化比較試験(RCT)によって明らかにしようとするものである。これまでの実証研究は国や地域レベルの分析が中心であったが、本論文では、直接リーダーや住民の行動を分析した点に特徴がある。

著者たちは、天然ガス開発に関する情報をリーダーにのみ伝えるコミュニティ、住民にも伝えるコミュニティ、情報伝達をしないコミュニティを設定し、リーダーと住民の実際の行動履歴とともに実験下の選択を記録している。最初のふたつのコミュニティの違いが本論文の要点であり、住民が情報を得ることで政治活動に説明責任を求める要求が高まり、リーダーのレント追求が抑制されるという仮説が検討されている。さまざまな行動が評価されているが、代表的な行動変化として、リーダーにのみ情報が伝達された場合には、(情報伝達がない場合と比較して)リーダーが他のリーダーと接触する回数が多く、研究チームから提供された資金が私的に流用される割合が高いことが示された。これらは、レントの追求と再選のための資金作りを行っていると解釈されている。住民にも情報が伝達されたコミュニティでは上記の傾向は弱くなるが、変化は明確ではない。他方で、住民の行動にはより明確な違いがみられる。住民に情報が知らされているコミュニティでは、リーダーのみが情報を得ている場合よりもコミュニティの会合への出席率が高く、コミュニティ活動への資金の提供が多いことがわかった。さらに、当時モザンビーク北部では武装勢力の活動が活発化していたが、これらのコミュニティでは襲撃件数が有意に少なかった。これらは、住民が資源開発によるコミュニティの発展を期待していることを示すと解釈されている。

実際の資源開発の事例にもとづいた実証研究であり、RCTではあるが研究成果は現実の社会の動きと密接に関連している。それだけに結果の解釈は難しく、著者らが提示した仮説が立証されているか疑問に感じる部分はあるが、情報伝達の範囲を広げることによって、住民が収奪的行動をやめ生産活動に関与していることが示されている。著者らの言うように、「資源の呪い」がコミュニティ・レベルの対策で防げるとすれば大きな発見である。

福西 隆弘(ふくにし・たかひろ/アジア経済研究所)

 
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