2022 年 60 巻 p. 31
編者の武内は、ここ10年ほどアフリカの土地に関する研究会を続けてきた。アフリカを観察していて、農村が劇的に変化しているという実感があり、その状況を何とか理解したいと思ってのことである。本書は最近一緒に議論してきた内外の研究者とともにまとめたもので、ガーナ、ザンビア、南アフリカ、ジンバブウェ、ナミビア、モザンビーク、ルワンダ、エチオピア、ケニアといった国々を対象として、農村の土地をめぐる近年の変化や土地政策との関係について論じている。
アフリカ農村の劇的な変化とは、簡単に言えば、土地の私有化の急速な進展である。これには、企業による大農場の創設、都市居住者による農地購入、村人による土地囲い込みなど、さまざまな形態があり、アフリカで国を問わず広く観察される。
背景にあるのは、農村の土地に対する需要の顕著な高まりである。なぜ土地に対する需要が高まるのか。重要な要因として、人口増加が挙げられる。アフリカ諸国では、20~30年で倍になるペースで人口が増えており、農村部でも土地に対する人口圧力が高まっている。加えて、農地への投資が拡大している。2000年代から2010年代半ばまでアフリカ諸国は好景気に沸いたが、そのなかで国内外の企業による農業投資が急増した。好景気によって成長した都市中産階級は、こぞって農村の土地を購入した。農地は老後の生活を支える社会保障として重要だし、彼らの所得で十分買えるほど安価であった。こうした私有化の動きに拍車をかけたのが、1990年代以降の土地所有権改革である。ドナーの支援を受けて実施された所有権改革は、土地権利証書の発行を簡便化し、土地の市場化を加速させた。
こうした大枠の見取り図が共通する一方で、個別に見れば、アフリカ諸国が直面する土地問題は多種多様である。土地問題は、人口や環境に関わる要因はもとより、伝統的権威の性格や国家統治のあり方をも反映し、それらは国ごとにまちまちだからである。本書では、伝統的権威が強い影響力を持つ国と持たない国、政権与党が強い支配力を持つ国と持たない国といった形で、多様なタイプの国を事例研究に含めた。精緻な類型化に向けた議論は今後の課題だが、オープンアクセスの書籍なので、多くの方々に読んでいただき、アフリカの土地に関する議論を深めることができれば嬉しく思う。
武内 進一(たけうち・しんいち/アジア経済研究所・東京外国語大学)